モスクワの美術館を少しだけ 〜2013年夏の出張ついで〜

2013年 8月 11日 初版作成


2013年6月のモスクワ出張の折に、仕事の合間に2つ(正確にいうと3つ)の美術館を回りました。プーシキン美術館(本館と新館)、そしてトレチャコフ美術館です。

もう少し時間があればもっと楽しめたのですが・・・。



1.プーシキン美術館(本館)

 東日本大震災の年(2011年)に日本に来るはずだった「プーシキン美術館展」が、震災の影響で延期となり、今年(2013年)神戸と横浜で開催されています。
 モスクワ出張の折、この美術館の本拠地に行きました。

 この美術館、事前にガイドブックをろくに見ていなかったので、「本館」と「新館」(ヨーロッパ近代美術館)があるということを知りませんでした。
 地下鉄「クロポトキンスカヤ」を降りて、巨大な「救世主ハリストス聖堂」(ハリストス=ロシア語でキリスト。革命後に破壊されたものを2000年に再建)に圧倒されながら、巨大な大理石の立派な美術館に吸い込まれると、そこは「本館」でした。
 仕事帰りなので、仕事カバンを持っていたため、地下のクロークに預けて地下から入ると、なんか巨大な古代遺跡や石像ばかり。あれ、違うフロアに入ってしまったかな? と一度出て、1階から再入場。でも、結局同じ。クロークでカバンを取り出して、そこで初めてガイドブックをよく読んで、行きたかったのは新館だと分かって、あわてて本館から出ました。
 本館も立派な美術館(というより博物館)なので、興味のある方はごゆっくりどうぞ。


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プーシキン美術館・本館

プーシキン美術館・本館のパンフレット




プーシキン美術館・本館のチケット


 

2.プーシキン美術館(新館)

 立派な大理石の本館に向かって左側に隣接して、やや小さめの建物が新館です。でも、入口が何とも分かりづらい・・・。

プーシキン美術館・新館(本館の左隣)

 こちらがいわゆる「ヨーロッパ近代絵画コレクション」と呼ばれる新館でした。ソ連になってから、ペテルブルクのエルミタージュ美術館からも大量の絵画をここに移動したようです。印象派の絵画(マネ、モネ、ドガ、ルノアール、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ、など)をはじめ、アンリ・マティス、シャガール、ユトリロ、アンリ・ルソー、ピカソなど、名品が目白押しでした。
 モスクワの美術館の中では、何といってもイチオシです。本館には行かずとも、この新館は必見です。自然光の差し込む部屋で、椅子に腰を下ろして名画に囲まれた空間と空気を味わう、贅沢気分の美術館でした。

意外に珍しいロートレックの油絵


典型的なルノアール。この時期、一部は日本に行っていました。

ゴッホですね。


モネの間。ルーアン大聖堂、ロンドン・ウェストミンスターの連作の一部がここにもありました。



マティスの間。この色彩感は何ともリズミカル。





マティスの間。自然の光が入ります。

マティスの使ったパレット。


アンリ・ルソーの熱帯植物。

ほんわかとしたムンク。


ほっとするユトリロ。


ゴーギャンも充実。

シャガールはロシア出身なのでした。

 ここで面白かったのは、画家のロシア語表記でした。なるほど、確かにそうだ、と思いながらも、イメージがかなり吹っ飛びました。綴りよりも発音優先でロシア文字に移されているようです。

    通常の綴り        ロシア語の綴り(発音は自信がありません)

   ルノアール Renoir     Ренуар (リェヌアール)
   ゴッホ Van_Gogh      Ван Гог (ヴァン・ゴーホ)
   ゴーギャン Gauguin    Гоген (ゴーギェン)
   セザンヌ Cezanne     Сезанн (スェザーン)
   モネ Monet         Моне (モーネ)
   ドガ Degas         Дега (ディエーガ あるいは デガー)
   シャガール Chagall    Шагал (シャガール)
   マティス Matisse     Матисс (マティース)

   ゴヤ Goya         Гойя (ゴィヤー)
   ドラクロア Delacroix    Делакруа (デラークルア あるいは デラクルーア)
   アングル Ingres      Энгр (エーングル)
   ミレー Millet       Милле (ミーレ)

 ここの新館のカタログは、ロシア語版しかありませんでした。「英語版はありませんか?」と聞いたら「ない」とのことでした。仕方がないのでロシア語版を購入。
 なお、他の美術館や店もそうですが、ロシアの売り場では「現物販売」が原則のようで、美術館のカタログも売店に1冊しか置いてありません。皆が眺め回して薄汚れてくたびれたものを「これ下さい」といって買います。売れると、次の1冊をそこに置くようです。私は本を買うときは、他人の手垢にまみれたいちばん上ではなく、下のほうから引っ張り出して買うのが普通なので、この方式はちょっぴり不満でした。(おそらく、ソ連時代からの「見本と実物が違う」という弊害を避けるための現実的な方式なのでしょう)

プーシキン美術館・新館のパンフレット





プーシキン美術館・新館のチケット

 プーシキン美術館のすぐ前に、1930年代に「ソビエト宮殿」建設のため爆破破壊され、2000年に復元建設された「救世主ハリストス大聖堂」があり、威容を誇っています。

救世主ハリストス大聖堂

 

3.トレチャコフ美術館

 プーシキン美術館が「ヨーロッパ美術」中心なのに対して、帝政時代の商人トレチャコフのコレクションを母体としたトレチャコフ美術館は、ロシア絵画が中心です。
 ロシア絵画なんてほとんど知らない、ということで、こちらは「軽く通り過ぎる」つもりで立ち寄りました。でも、広い・・・。


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入口にトレチャコフさんの像

 お目当てであったクラムスコイ作「忘れえぬ女」を見つけ、この絵さえ見れば良い、と思ってさっさと歩いていると、見覚えのあるリムスキー・コルサコフの肖像画が。ああ、ここにあったのか、と初めて知りました(ウィキペディアの「リムスキー・コルサコフのページにも載っている絵です)。
 でも、こういった絵が手の届くところに並んでいる空間に身を置く、という「空気感」がやはり何とも言えません。

クラムスコイ作「忘れえぬ女」

こんなたくさん並んだ中の1つです


セーロフ作のリムスキー・コルサコフ肖像画。

この美術館も、こんな風に日の光が差し込みます。

 実は、有名なレーピン作の「ムソルグスキーの肖像画」もあったようなのです。同じ作家の「イヴァン雷帝と皇子イヴァン」の絵は見ていましたから、すぐ近くにあったはずなのですが・・・。
 と思って調べてみたら、いやいや、実は昨年(2012年)夏からずっと日本に、しかもすぐ直前まで我が家の近くに来ていたらしい・・・(葉山に2013年5月26日まで)。ということは本家トレチャコフ美術館には展示されていなかった可能性が高いので、決して見逃したわけではなさそう・・・。う〜ん、でも、両方でニアミスのすれ違い・・・。

レーピン作の「イヴァン雷帝と皇子イヴァン」

 美術館内に広い空間があり、ピアノも置いてありました。ミニコンサートも開かれるのでしょう。

美術館内のホール

 何と、トレチャコフ美術館には日本語のパンフレットがありました。

トレチャコフ美術館の日本語パンフレット




トレチャコフ美術館のチケット



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