冗談音楽

1999年6月5日


 第42回の演奏会で、モーツァルト/「フィガロの結婚」序曲、リスト/交響詩「前奏曲」、ベートーヴェン/交響曲第8番を演奏しました。

 この3曲を並べると、ふと思い当たることがあります。3曲とも、「冗談音楽」のネタに使われてるのを聴いたことがあること。
 1つは、15年ほど前に聴いたベルリン・フィル創立100周年コンサート。もう1つは知る人ぞ知る、P.D.Q.バッハ。

 ベルリン・フィル創立100周年コンサートは、FM放送でオンエアされたものを聴いたもので、小澤征爾氏が解説していました。このコンサート自体、内輪で楽しむためのコンサートだったようです。録音していればよかったのですが、残念ながら記憶だけに頼って再現してみます。
 ここで登場したのが、「レ・プレリュード」。パントマイム付で、ステージ上には応接間にステレオが置かれています。ここでレコード(CDではない!)をかけると、オケの演奏が始まります。要するに、オケの音はステレオから聴こえてくる、という設定。電話がかかってきて、ステレオのボリュームを下げます。すると、オケの音が小さくなるわけです。電話が終わってボリュームを上げると、オケの音がまた大きくなります。
 レコードには「針飛び」というのがあって、レコード表面に傷があると溝を飛び越えて1つ前の溝に戻り、同じところを何度も繰り返すことがあります。これが起こってしまいます。場所は、400小節音付近(スコアで見て下さい)。なるほど、このパロディにはうってつけの場所です。ただし、単純に繰り返すのではなく、変拍子風に戻っては繰り返します。
 ここをようやく乗り切ると、曲のクライマックス。ここで突然の停電。レコードプレーヤーの電源が落ちるとどうなるかを知っている人も最近は少ないかもしれません。要するに、回転が徐々に止まるので、
・・・という風に音がグリッサンド下降してなくなるわけです。
 これは、聴いていて笑えました。ベルリン・フィルの団員がちゃんとアレンジしたそうです。何故この曲が選ばれたのかは分かりません。でも、こちらの「裏バージョン」の方も一度演奏してみたいものです。

 もう一つは、P.D.Q.バッハ。偉大なバッハ一族のひとりで、1807年生まれで1742年没(?)となっています(誤植ではありません)・・・。ピータ・シッケレ教授が再発見した作曲家で、CDでもシッケレ教授のナレーションの解説が入ります。
 作品の一つに「未開始交響曲」(Unbegun Symphony)というのがあって、要するに「未完成交響曲」(Unfinished Symphony)をもじったものですが、「1、2楽章を作曲し忘れて、3楽章から始まる交響曲」だそうです。ここに出てくるのが、モーツァルトの39番の第3楽章のトリオ。例の、クラリネットのメロディです。これをよく聴くと、後ろに流れているのがベト8の1楽章の第1テーマ。ピッタリ重なります。
 曲はだんだんごった煮の様相を呈してきて、突然「フィガロの結婚」序曲が流れます。前奏に続いて、フォルテで現れるのは、「もろびとこぞりて」。まあ、よくありそうなパターンですが。
 その他、「ジュピター」(モーツァルトの41番)の冒頭と「幻想」の固定観念のテーマが同時に鳴ったり、第九の歓喜の歌と「草競馬」が一緒に鳴ったり・・・。「ホフナング音楽祭」のような上品さに比べると、ちょっと下品で雑ですが、いろいろ笑えます。

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