スライディングスケールの正しい運用
兵庫医科大学内科学糖尿病科 講師 浜口 朋也 / 教授 難波 光義
引用ホームページ:http://www.pariet.jp/helpful/vol55/no571/sp09.html
上記ホームページの要約
・スライディングスケール法は血糖レベルに対応して投与するインスリン量をその都度決定する方法
・表に1例を示す
血糖値(mg/dL) 速効型または超速効型インスリンの皮下注射量
<800単位。さらにブドウ糖10gを経口摂取
80〜1390単位
140〜2002単位
201〜2504単位
251〜3006単位
>3018単位

・血糖区分やインスリン投与量には一定のルールがない
・文献的にもスライディングスケールでは血糖変動幅が大きくなり血糖コントロールが不十分となりやすいことが指摘されている
・スライディングスケールは担当医によって違いがあり複雑
・スケールの指示が煩雑で、患者や看護師が実施する際に医療過誤を誘発しやすい
・多くの論文がスライディングスケールの使用に否定的
・必要とするインスリン量はその時点の血糖値だけで規定されない
 ・次のインスリン注射までに摂取する食事のカロリーや内容食事のタイミング、運動量によっても大きく左右される
 ・それらの条件を考慮せず血糖値の高低だけで決定する投与量は実際の必要量とは違ってくる
・最近は「責任インスリン」という考え方
 ・ある時点の血糖値に最も影響を及ぼしているインスリンをいう
 ・例えば各食前の超速効型インスリンと就寝前に持効型インスリンの皮下注射を施行している症例
  ・夕食前血糖値に最も影響する「責任インスリン」は昼食前に皮下投与した超速効型インスリン
  ・着目する血糖値が低い(高い)場合は「責任インスリン」の投与量が多かった(少なかった)と判断
アルゴリズム法
  ・「責任インスリン」の考え方をもとに投与インスリンの種類や作用時間なども考慮してインスリン投与量を決定する方法
・スライディングスケールは全く臨床的な有用性に欠けるものではない
予測できない病態、例えばシックデイや手術後などでは「アルゴリズム」は役立たない

・血糖値による簡易スライディングスケール(表A)
血糖(mg/dL)速効型または超速効型インスリンの皮下注射量
<80 指示量より2単位減量して食後に皮下注射
80〜200指示量
>200 指示量より2単位増量

・筆者は
基本となる注射量はアルゴリズムを用いて決定
・加えて食事や運動による血糖変動を考慮して、表Aの血糖測定値に応じた簡易スケールを使用
・場合によっては「摂食量が半分以下なら指示量の半量を皮下注射」といった食事量に応じたスケール
・病態・状況に応じておおまかなスライディングスケールを用いることがある
有用性に関するエビデンスは多くないが、病態や変動しやすい血糖値を安定させる方法としては是認できる

文献
1)Kitabchi AE, Nyenwe E. : Sliding-scale insulin : more evidence needed before final exit? Diabetes Care, 30, 2409〜2410(2007)
2)難波光義、浜口朋也:不安定な医療者が血糖を、糖尿病を探る(河盛隆造編著)、永井書店、82〜85、2004年
私見)
スライディングスケールは看護師が指示を間違えることがあり、かなり問題・・・。

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