高齢者の低ナトリウム血症
m3comカンファレンスでの意見要約 2010年12月
いろんな意見が出ていました
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・浮腫なく消耗傾向の痩せている老人で、鉱質コルチコイド反応性低ナトリウム血症(MRHE)が多い
心不全による浮腫など水貯留を否定、肺気腫の人であれば、SIADHが鑑別に挙がる
・不顕性誤嚥のリスク因子になるので、水貯留の無い低Naなら、まずNaCl末などで塩分を増やす
・ダメならフロリネフ少量追加、Na正常下限を目標に治療している
胃瘻流動栄養では Na量が少なめなので、症例に応じて積極的に追加
塩漬けにしていると、発熱したときに急にひどい高Naに化けることがあり
〔例〕エンシュア 1500 kcal 中 NaCl 3.06 g
   CZ-Hi 1200 kcal 中 NaCl 2.76 g
   E7II 1200 kcal 中 NaCl 5.52 g
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濃厚流動食は食塩が少ないので、低ナトリウムは高頻度
・NaCl3gで十分と言われているが、日本人は3gでは不足の人が多い
尿ナトリウムが10mEq/L以下なら、ナトリウム欠乏と診断して、1日3gの食塩を濃厚流動に混合
・ただナトリウムスペースは食塩換算で110グラム/bodyと小さいので注意が必要
・その他は、ラシックスやSIADHが原因が頻度的には多い。
甲状腺機能低下症が低ナトリウムの原因となる
   http://www.oguradaiclinic.jp/page1841.html
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低Naになっても変わりなければ、補正はしなくてもよいかもしれない
高齢者の低Na血症では調べても鑑別診断が困難
・しかし、副腎不全だけは調べた方がよい
・ADHと浸透圧からSIADHと診断しても長期臥床が原因になるとの記載もある
・ただ、意欲や活動性の低下が低Na血症の補正で改善することがある
・鑑別のためには一時的なNaClの投与でかまわない
・鑑別診断の最もわかりやすいのは塩分補充でよくなるか、ミネラルコルチコイド、コートリル、水制限などで改善するかどうか
・水制限はデータがよくなっても臨床的にはかえって悪くなる(脱水が強まる)ことがある
・SIADHの診断のための水分制限は慎重に実施した方がよいに思われます。
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・CRF ACTH負荷試験を数人の低Na血症を伴う、低体重・高齢者に施行した
・いずれもcortisolの反応性に遅延と反応低値
・このような方は実際には非常に多いので、塩分で調節するよりも、コートリル5r〜10rを投与することで、
Naは改善し、食欲改善にもつながることが多い
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・それではいつまで投与し続けるのか
投与をやめればまた低Naになってしまうような気があうる
コートリルではなく、ミネラルコルチコイドのフロリネフのほうが副作用が少なくて済むのでは
食塩3g程度を経管に混ぜて様子見ることが多い
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・そのような患者はかなりいる
・脳梗塞など中枢疾患、軽度の中枢性塩類喪失症候群ではないか
脳梗塞寝たきり患者では大体Na下がりがち
・SAH後遺症であればかなり低下するので+6gの塩分付加を行う
・SIADHとかACTH単独欠損とかもあるが、Naが125Eq/L程度でホルモン検査は不要
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・在宅、施設であれば血液検査以上の検査はむつかしい
・SIADH、MRHE、CSW等を鑑別するのは難しい
症状がなければ、経過をみる
・それでもNa<120meq/L、もしくは意識障害等の症状が出現すれば専門医に送る
・悪化する場合は薬剤性のNa排泄上昇、もしくは塩分制限した場合が多い
SIADHを起こしそうな向精神病薬、抗てんかん薬等の内服がされていないか?
利尿剤の内服(ARB等の合剤含む)していないか?
・もし内服しているならば投与の変更、中止(向精神病薬などは中止は難しい)も検討
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・在宅や施設の高齢者の低Naはコントロールしておく必要がある
・急性意識障害で、救急搬入される方が、時々いる
・Naが100台で搬送される方もいる
・搬送されてからの120台の方も意外とある
・問題意識を持つことは大切
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低ナトリウム血症の原因薬剤として意外と知られていないのがPPI
・逆流性食道炎などで高齢者にPPIが処方されているので、注意ga必要
パリエットとオメプラールの添付文書には低ナトリウム血症の副作用が記載されている
タケプロンには記載されていない
・PPIを内服している高齢者で低ナトリウム血症が見られた場合一度中止してみる
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・施設や入院患者での経管栄養の患者、在宅でもエンシュアなどを多く摂取している患者ではよくみられる
・「最近食べなくなって、元気も無くて」という患者で血清Naが低ければとりあえずNaClを付加した点滴
・それで、元気になった患者には、ご飯に塩をかけて食べさせる
高齢者に対する過度の塩分制限とエンシュアなどが原因と思われる
・エンシュアにはNaはほとんど入っていなかった?
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・ずっとみていて低Naになっても変わりなければ、補正はしなくてもよいかも
・高齢者の場合にみられる低Na血症のほとんどは多種の疾患の区別はできない
副腎不全だけはちゃんと調べた方がよい
・ADHと浸透圧からSIADHと診断しても長期臥床がその原因になるとの記載
・意欲や活動性の低さが低Na血症の補正で改善することがある
・一時的でよければNaClの投与でかまわない
・鑑別診断の最もわかりやすいのは
 ・塩分補充でよくなるか
 ・ミネラルコルチコイド、コートリル、水制限などで改善するかどうか
水制限はデータがよくなっても臨床的にはかえって悪くなる(脱水が強まる)ことがある
・SIADHと自信がなければ最後にした方がよい
参考)
CSWS:中枢性塩類喪失症候群 Cerebral Salt Wasting Syndrome
くも膜下出血、脳外科手術などの脳疾患により尿中Na排泄が増加してNa喪失が起こり、脱水と低Na血症を呈する
MRHE:ミネラルコルチコイド反応性低Na血症 Mineralcorticoid-Responsive Hyponatremia of the Elderly
 高齢者でレニン・アルドステロン系の反応が低下し、低アルドステロン、腎のアルドステロン反応性の低下で尿中Naの排泄増加で低Na血症になる。低Na血症、尿中Na排泄の増加あり。SIADHと区別がむつかしい。
CSWS、MRHEともSIADHとの鑑別には脱水をともなうかどうかで区別が可能。

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