尿酸高値、痛風なくても下げてよいのか? m3com『賛否両論』より 2011年2月10日 |
●下げるべき ・尿酸値の高値は、心疾患や腎疾患の危険因子とする報告が増加 ・無症状でも一定の尿酸値以上なら積極的に尿酸値を下げる ・痛風発作、痛風結節、腎障害などの臨床症状がない高尿酸血症を「無症候性高尿酸血症」という。 ・無症候性の高尿酸血症の患者を14年間追跡した結果、尿酸値が高値ほど痛風関節炎の発症が多い ・腎疾患の危険因子としても尿酸の抑制は重要視される ・尿酸値が高いと尿路結石の発症頻度が高まり、尿酸値が高いケースで腎障害が進行しやすい(Am J Kidney Dis. 2004;44:642-50.)。 ・尿酸高値は高血圧進展の独立した予測因子(Hypertension. 2006;48:1031-6.) ・男性で7.5mg/dL以上、女性で6.3mg/dL以上の場合、高血圧患者の心血管イベントが増加 ・日本痛風・核酸代謝学会が2010年「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」 ・無症候性高尿酸血症で生活指導の実施でも尿酸値が9.0mg/dL以上は薬物治療を考慮 ・尿路結石、腎疾患、高血圧などの合併症がある場合、尿酸値が8mg/dL以上は薬物治療を考慮 ●経過を見る ・「尿酸の高値は腎障害や心疾患の『原因』ではなく、疾病の進行による『結果』 ・症状もない段階では、生活改善を中心に対応し、積極的に尿酸を下げる必要はない ・尿酸は悪い面と同時に、良い面を併せ持つ ・核酸の代謝物質である尿酸は、血管障害性を持つ ・ビタミンCを上回る強い抗酸化作用を持ち、酸化ストレスから組織を守る有益作用もある ・腎・心臓の障害が起こると組織の障害抑制の尿酸が増加するという機序も想定 ・尿酸の濃度の増加で障害の進展が抑止される可能性 ・神経系の保護に尿酸が寄与している可能性、 ・アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症などの神経疾患や運動性急性腎不全では、尿酸値が低値。 ・尿酸の循環器疾患に対する負の側面がランダム化比較試験で証明されていない ・尿酸と腎障害、心疾患との関係は、エビデンスのレベルが高くない(観察研究で証明された程度) ・尿酸はいい物質なのに、下げてしまっていいのか? ・エビデンスが確立している高血圧や高脂血症などの心血管イベントの危険因子への治療、生活改善の指導 ・心血管イベントのリスクと考えられたホモシステインが、低下療法を行っても効果がなかった例もある ・臨床試験で証明されていないので無症状例では、生活改善を中心にし、尿酸を積極的に下げずに経過を見る |