インフルエンザワクチンの作用機序
Medical tribune 2011.0407
・インフルエンザワクチンには3種類
 @不活化スプリットワクチン(現行ワクチン)
 A弱毒化生ワクチン
 B不活化全粒子ワクチン(ウイルス粒子をホルマリンで不活化)
不活化全粒子ワクチンは発熱などの副作用あり、1970年代以後使用されていない
ウイルス表面糖タンパク質ヘマグルチニンを精製した抗原、スプリットワクチンが使用されている。
・ワクチン効果は抗原に対する抗体価上昇度で評価される。
・抗体価上昇のメカニズムは分かっていない
・Toll様受容体(TLRなどの認証機構を経て獲得免疫系が活性化されIFN産生を誘導する)
・インフルエンザウイルスはTLR7によって認識されることが分かってきた。
 ・TLRからのシグナルをDC(樹状細胞)が受けて抗原特異的なT細胞を活性化する
 ・TLR以外にRIG(Retinoic acid inducible gene)、NLR(Nod-like receptor)からも認識される
・弱毒化生ワクチンはTLR7とその他の経路でも認識される
・全粒子ワクチンはTLR7のみに認識される
初回スプリットワクチンは小児に効かない
 ・スプリットワクチンは自然免疫系を活性化できない
  ・ワクチン製造過程でTLR7のリガンドであるウイルスの1本鎖RNAを除去してしまうため(核酸成分がアジュバントして働く)
 ・インフルエンザ暴露歴のある成人ではスプリットワクチンでメモリーT細胞が直接活性化される。
・スプリットワクチンで自然免疫系を活性化する新規アジュバントの開発
 ・βグルカンの一種シゾフィラン(SPG)
 ・TLR29のリガンドCpG-DNAの複合体SPG-CpG
・TR7の内因性アジュバントの1本鎖RNAをスプリットワクチンに添加しても生体内では壊れやすく役に立たない
・SPG-CpGは生体内でRNAより安定して作用する
・SPG-CpG付加スプリットワクチンの効果
 ・マウスへの初回接種で肺胞洗浄液中のIgA抗体価の上昇
 ・野生型マウスへの鼻腔内接種で全粒子ワクチンを越えるT細胞応答
・現行のスプリットワクチンには改善の余地がある
・全粒子ワクチンの見直し→有効性の検証
・自然免疫系の分子機構の解明→経験則にとらわれない議論の必要性


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