放射線医学の基礎知識 『先生、放射能って大丈夫なんですか?』 ASAHI MEDICAl 2011.05 |
・放射線の生体への影響 ・人体が放射線を浴びると細胞中の水分子の電子がはじき飛ばされ、この電子がDNAを障害し,細胞が死んだり、癌化することがある ・しかし、どの程度の放射線を浴びたかということが問題になる ・分かりにくい放射線の単位 ・ベクレル(Bq):放射性物質の放射能を示す(Bq/kg) ・グレイ(Gy):放射線は距離の2乗に反比例して減衰、その吸収線量を示すのがグレイ(Gy/h) ・シーベルト(Sv):放射線にはα、β、γ等いろいろあり、同じ吸収線量でも人体への影響が違う。放射線の種類による違いを修正したものがシーベルト(Sy/h) ・自然被曝線量は世界平均で24mSv(ミリシーベルト)、日本では年間平均で1.5mSv、イランのラムサールでは10mSv ・線量の多い地域でも住民の健康影響は他地域より多いということは確認されていない ・東京・ニューヨーク往復で0.1mSv被曝(高度による宇宙線の増加) ・低線量の長期被曝の問題性は? ・確定的影響:一定線量以上の放射線を浴びると現れる影響 ・確率的影響:どれ以上浴びたらという数値がなく、線量と影響の関係が直線的な影響(統計的に評価できない) ・長崎・広島の原爆被爆での調査 ・100mSv以上の被曝で発がんのリスクが0.5%アップ ・放射性ヨードの影響 ・野菜や牛乳への放射性ヨードの汚染は内部被曝となる ・チェルノブイリ事故では子供の甲状腺が増加した ・放射性ヨウ素が甲状腺に蓄積するため→放射性ヨウ素で汚染された食品を摂取しなければ防げた? ・安定ヨウ素剤の服用で放射性ヨウ素の甲状腺への取り込みを防止できる ・ヨウ素含有消毒剤はヨウ素以外の有害成分を含んでおり危険 ・日本では日常的に海藻などヨウ素を含む食品を多く摂っているので原発で危険作業従事者以外では安定ヨウ素剤は必要ない ・ヨウ素の1日摂取基準は100〜150μgに対し、日本人の平均摂取量は1000〜1500μg ・放射性ヨウ素の半減期は8日、1ヶ月で10分の1以下 ・安定ヨウ素剤の服用で甲状腺への取り込み防止可能 ・放射性セシウムは心配ないか? ・放射性セシウムの半減期は約30年 ・体内に取り込まれたセシウムは筋肉に蓄積し、肉腫の原因にならないか? ・チェルノブイリ事故では肉腫が増加したという事実はない ・セシウムは接種しても排泄される ・取り込まれた放射性物質が排泄されて体内に残留する量が半分になる期間を『生物学的半減期』という ・放射性セシウムの生物学的半減期は70日 ・セシウムを一度摂取してもずっと内部被曝するわけではない ・妊娠中の母体のは胎児への影響は? ・放射性ヨウ素では胎児へは4分の1 ・成人の暫定基準300Bq/kg越える飲料水を飲まなければ胎児への影響はない ・避難住民に対する差別 ・原発事故以降に避難地域に立ち入った事実がなければ被曝線量の計測は必要ない ・チェルノブイリ事故後に生まれたこどもや成人にがんの増加は認められなかった ・被曝線量次第で遺伝子が傷つくがそれが次世代まで影響することはない |
参考) しきい値:閾値と書くがこれは誤用、閾値はいきちと読むのが正しい。敷居値が正しいのだが閾値をしきいちとなって定着してしまっている。 放射線被曝でのしきい値は一定の放射線量以下では障害が発生しないが、これを超えると障害が発生する線量の境目をいう。 |