多剤耐性菌の出現と医療現場での対応
Medical ASAHI 2011.May
・問題視される多剤耐性菌
 ・アシネトバクター属、肺炎桿菌、大腸菌
 ・上記の菌が肺炎や血流感染の起炎菌となった場合、打つ手がない
 (MRSA、VREでは有効な抗菌剤が残っている
 ・コリスチン注射薬が有効(未承認)であるが、韓国では耐性株が出現
・KPC(肺炎桿菌カルバペネマーゼ)産生株ではゾシン(ピペラシリン(2008年承認)+タゾバクタム)に高度耐性株が出現
新抗菌薬の開発が停滞しているので今後数年は使うべき抗生剤がない状態が続く
・アシネトバクタ、肺炎桿菌、大腸菌はG(−)菌で細胞外膜にリポ多糖(LPS)を含有
 ・リポ多糖はエンドトキシンと呼ばれるもので血液中に入るとショック、多臓器不全を引き起こす
 ・腸管常在菌はエンドトキシン以外に毒素を産生しない
 ・腸管に保菌していても下痢などの症状はない→気付きにくい→患者間に伝播
多剤耐性緑膿菌、アシネトバクターは入院し治療を受けている患者で問題であった→市中では問題なし
大腸菌、肺炎桿菌は健常者でも尿路感染、肺炎の原因となる→市中でも多剤耐性菌は問題となる
・多剤耐性大腸菌は現時点では弱病原性が多いが→近縁の菌(O157等の病原性大腸菌)に耐性プラスミドが伝播しないか心配
・しろうと判断での抗生剤服用の危険性
 ・残薬のニューキノロン剤を服用→腸内のNDM-1産生大腸菌から耐性遺伝子→病原大腸菌に伝播→症状悪化
・新型多剤耐性菌はSM耐性結核菌とは違う→病院外から患者に付着して侵入
・下記のような場合は常在菌として無視せず薬剤感受性を調べる
 ・カルバペネム使用患者では尿や、便から肺炎桿菌、大腸菌
 ・フルオロキノロン使用患者では喀痰、尿からアシネトバクタ
・ICTによる院内での多剤耐性株の蔓延予防対策
多剤耐性アシネトバクターによる感染症が5類定点報告疾患に追加(感染症法2011年2月より)
 ・カルバペネム、フルオロキノン、アミノグリコシドの3系統耐性の場合、報告定点施設では報告義務
 ・2系統耐性では報告義務はない→複数の患者から分離されれば問題
  ・感染制御の観点からは原因調査と感染拡大防止のための対策が必要
  ・1系統耐性でも同じ株のアウトブレイクはには迅速な対応が必要
感染症法で指定されていない薬剤耐性菌
 ・リネゾリド耐性MRSA、コリスチン耐性緑膿菌→感染症法届け出の対象外
 ・感染制御上適切な対応が求められる

院内感染(医療機関感染)
市中感染
多剤耐性緑膿菌 慢性呼吸器疾患患者
術後患者
人工呼吸器患者
膀胱/尿路カテーテル留置患者
ほとんど無関係
多剤耐性アシネトバクター・バウマニ
NDM−1産生腸内細菌 慢性呼吸器疾患患者
術後患者
人工呼吸器患者
膀胱/尿路カテーテル留置患者
慢性の尿路感染症患者
細菌性膀胱炎の患者
細菌性肺炎の患者
新生児の敗血症
(下痢症患者)
KPC産生肺炎桿菌
CT−M型産生大腸菌
リネゾリド:製品名 ザイボックス錠600mg、同注射液 600mg(ファルマシア株式会社) ・・オキサゾリジノン系合成抗菌剤
適応症:バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染症(2001年)、MRSA感染症(2006年)

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