白癬症の診断と治療 Medical Trivune 2011.06.16
順天堂大学練馬病院皮膚・アレルギー科教授 比留間政太郎 |
・日本人の4人に1人は足水虫に罹患している ・白癬菌は真菌、かびの一種である ・寄生する場所は皮膚の表皮である ・表皮の角質層を構成するケラチンを栄養源として増殖する ・毛髪や爪もケラチンでできているので白癬菌の巣になる ・時に白癬菌はリンパ管炎を起こし、鼠径部リンパ節が腫大して重症化する ・糖尿病、膠原病などでは重症化する例が多い ・糖尿病では痛み、かゆみに鈍感で血流障害もあって白癬菌増殖には都合がよい ・皮膚のターンオーバーは約1ヶ月で垢となってはがれ落ちる ・薬剤治療は白癬菌の増殖を抑えながら細胞がはがれ落ちるのを待つ ・時に菌の増殖が皮膚のターンオーバーを上回って増殖することがある ・足底部では皮膚が厚く、ターンオーバーに3ヶ月かかり、治療は最低でも6ヶ月から1年必要 ・毛のターンオーバーは2〜3ヶ月、爪は6ヶ月〜1年 ・頭部白癬はシラクモと呼ばれる ・股にできる白癬はインキンタムシと言われる ・爪白癬は爪周囲の皮膚から連続的に爪甲下角質に菌が侵入して起こる ・爪白癬は外用剤だけで約30%の患者は改善する ・重症例では経口抗真菌剤が必要だが年齢、性、職業、家族歴、罹病期間、部位、程度を十分評価して行うべき ・薬剤の相互作用の危険性を十分認識して行うべき ・ステロイドを塗り続けて悪化した例や免疫不全では経口抗真菌剤の投与を勧める ・白癬菌は皮膚細胞と親和性が強いため目立った炎症を起こさないので湿疹と誤診する ・患部の垢をこすりとってKOH染色をして鏡検する、白癬菌と確認したら培養して同定 ・近年、トリコフィトン・トンズランスという新種が出現している ・格闘技選手(レスリング)の間で流行している ・130人の調査で高校生・大学生72.9%、柔道・レスリング選手が95%であった ・頭部、体部に出現し、体部では小紅斑、鱗屑、頭部では黒い斑点(black dot ringworm)が見られる ・通常の白癬とは異なる症状を呈するので注意 ・通常白癬菌より好角質性で強い炎症反応 ・症状がすぐ治まり保菌者となり周囲に感染を広げる傾向 ・角質層深部に入り込む傾向があり、抗真菌薬の内服が必要なケースもある ・ブラシ検査:丸形シャンプーブラシで頭皮全体を10〜15回強くブラッシングし、先端を培地に押しつけ培養に出す(2週間くらいで結果が出る) ・ブラシ検査陰性例で体部のみの場合は外用剤で治療可能、1〜2ヶ月は続ける ・イトラコナゾールのパルス療法 ・1週間服用3週間休薬を3回繰り返す(2004年2月保健適用) ・テルビナフィンの連続投与法、1日125mg、6ヶ月服用 ・どちらの治療法も集中して一定期間服用し人体への負担を軽くし、医療費を抑制できる |