高齢者の消化管穿孔を見逃しCT検査を怠った過失を認定 『医事訴訟のそこが知りたい』より
日経メディカル 2011.09
・男性76歳、2005年7月4日18:55、腹痛を訴え、地域の基幹病院を受診
・体温35.3度C、心拍76/min、SpO2 96%、収縮期血圧165mmHg、腹単(臥位)で著変なし
・カルテ記載で”腹部hard?”、”腸音弱い”
・血液検査、CRP0.23mg/dl、WBC6600
・ラクトリンゲル点滴し、絶食指示
・20:40、左下腹部痛あり、グ浣し、少量排便、生食+ガスター1A混注、22:55帰宅
・23:15状態悪くなり、再来院、入院を勧められたが、家族は希望せず、外来で点滴し、経過観察
・その間、茶色の吐物少量、痛みがあるか聞いたがはっきりした返答なし
・7月5日7時、緊急採血しWBC11000でカルベニン点滴、腹膨隆あり
・8:00腹部CT検査施行、消化管穿孔による腹膜炎、10:30全身状態不良で手術不可
・抗菌薬等で加療したが7月6日死亡
・家族は担当医が腹部CT、左側臥位での腹単検査を行うべきとして4100万円の損害賠償を訴えた
・2011年1月14日名古屋地裁判決
 ・医師の注意義務違反を認定し、1600万円の支払いを命じた
 ・裁判所が上げた4点の医学的知見
  @腹痛を訴えた患者が来た場合、緊急開腹手術の必要性を判断する必要がある
  A腹痛を訴える患者に対して急性腹症かどう鑑別か必要→問診・バイタルサイン、緊急画像診断(XP、エコー、CTなど)
  BXPについては臥位と立位正面(立位出来なければ左側臥位正面)で遊離ガスの確認
  C腹部CT検査による遊離ガスの確認
 ・患者への問診が不可能でも患者の診察で重大な疾患の可能性を認識できたはず
 ・単純XPで異常がないということで消化管穿孔は排除できない
 ・急性腹症の診断に有用なCT検査を怠った過失がある
腹痛を診たら消化管穿孔を念頭に
同じような事例がm3comに記事あり
○名古屋大病院で診察ミス 腹膜炎に気付かず女性死亡
11/09/08
記事:共同通信社
提供:共同通信社
ID:1706897
 名古屋大病院(名古屋市)は8日、嘔吐(おうと)や腹痛を訴えて来院した70代の女性が重い腹膜炎を発症していることに担当医が気付かず、翌日に別の病院で死亡する診察ミスがあったと発表した。
 病院によると、女性は2009年2月10日、救急外来を訪れ受診。担当した研修医は、便秘症による腹痛の疑いがあると判断し、かん腸処置をしたが、女性は翌11日に自宅で意識を失い、救急車で別の病院へ搬送され、死亡した。
 名大病院の事故調査委員会は、8月にまとめた報告書で「腹部のコンピューター断層撮影(CT)などを実施し、緊急手術をしていれば助かった可能性がある」と結論付けた。
 名大病院は遺族に謝罪し、救急部の専属医師を増やすなどの再発防止策を講じた。
私見)こんな判決が出るようなら
放射線被曝の危険性は考えず、腹痛患者にはかならず腹部CT、左側臥位での腹単検査をしなければならない。

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