肺炎診断でCRPは参考にしなくてもいい?
2010年8月12日 m3com 賛否両論より
●必要派の意見
・臨床現場で普及した臨床検査で微量の血液で簡単に測定可能
・初診時の炎症の程度の判定、治療成果判定にCRP値は参考となる
・CRPの値だけでいいのではない。
・昭和大学でのCRPの値と肺炎の重症度との関連
 ・発症から入院までの期間が0日から1日までの調査
 ・重症例で5mg/dL強で、軽症例が4mg/dL強で有意なし
 ・入院までの期間が2日から4日の場合は、重症例は16mg/dL、軽症例の7mg/dL程度
 ・入院までの期間が5日でも重症例は16mg/dL程度、軽症例は8mg/dL程度
 ・重症例で有意に高かった
・呼吸器感染症でない場合でも、CRPが上昇する
・CRPが高いほど、強い炎症があると疑うことが可能
・CRPの弱点
 ・臨床症状から遅れてCRP上昇が見られることがある
 ・感染症以外でも値が上昇することがある
 ・市中肺炎、誤嚥性肺炎、慢性気道感染症の急性増悪とアレルギー反応との鑑別は困難
 ・肝臓疾患患者では、CRPが肝臓で生合成されるため、CRP値の上昇が見られないことがある。

●必要ないの意見
・CRP陽性であっても、患者が呼吸器感染症かどうか鑑別は出来ない
・脂質異常症、消化器の炎症、手術の切創
・CRPは臨床症状よりも1日から3日遅れて値が上昇す
・臨床症状が消失後でもCPRが上昇したために、不必要ない治療が行われることもあり得る。
・CRPの値を参考にしない方が、呼吸器感染症だけではなく、その他の疾患を考えるようになる。
医療面接、身体所見に注視
・ポジティブと見た2008年の報告である(Am J Med 2008;121:219-225)。
 ・英国で570人を対象に市中肺炎の入院時CRPと30日後の死亡率を調べ、CRPと予後の関連性を検証
 ・入院時CRPのカットオフ値を10mg/dLとした場合、
  ・重症度の陰性的中率が98.9%→入院時CRPが10mg/dL未満ならば、死亡する可能性が高い重症市中肺炎を除外できる
 ・否定的な意見→CURB65でCRPと同等の診断が可能
Confusion of new onset (defined as an AMT of 8 or less)意識混濁度
Urea greater than 7 mmol/l (19 mg/dL)血中尿素窒素
Respiratory rate of 30 breaths per minute or greater呼吸数
Blood pressure less than 90 mmHg systolic or diastolic blood pressure 60 mmHg or less低血圧の有無
age 65 or older65歳以下
・CRPという単一のマーカーだけでなく臨床経過、臨床所見を基本にして多様な指標に基づいて診断すべき
・CRPの意味を否定的に見る論文では
 ・CPR値の増減によって診断が左右されるのは好ましくない。
 ・CRPを参考としない診療を目指すべきだ
・院内肺炎ガイドラインの軽症から中等症の重症度分類の判定にCRPは採用
・肺炎ならCRPが上昇するのは当然
・小児呼吸器疾患診療ガイドラインが2011年に改訂からCRPが重症度判定から消えた
・医師がCRPに慣れ親しんでいるので、存在しない状態を想像できない

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