滞る抗菌薬開発、適正使用がカギ
日経メディカル2011夏号
臨床上問題となる薬剤耐性菌とその治療薬および今後の課題
耐性菌種治療薬今後の課題
MRSAメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 バンコマイシン
テイコプラニン
リネゾリド(ザイボックス)
ダブトマイシン
バンコマイシン低感受性〜耐性
リネゾリド、ダブトマイシンの安易な使用で耐性化の懸念
VREバンコマイシン耐性腸球菌 リネゾリド
キヌプリスチン/ダルホプリスチン
リネゾリド耐性
ESBL基質拡張型βラクタマーゼ産生菌 カルバペネム
アミノグリコシド
フロモキセフ?
セフメタゾール?
カルバペネム使用増加により耐性緑膿菌、アシネトバクターの増加
緑膿菌MDRP多剤耐性緑膿菌 コリスチン
βラクタム+αの併用?
全薬耐性緑膿菌
併用療法による効果は疑問
MBLメタロβラクタマーゼ産生菌
カンジダフルクナゾール耐性 ミカファンギゾン(MCFG)
リボゾーム化アムホテリシンB(L-AMB)
MCFG、L-AMB抵抗性カンジダ種、トリコスポロン属感染症の増加
ミカファンギゾン耐性

・多剤耐性グラム陰性菌に対しては現在、日本で承認されている抗菌薬で使えるものはない
 ・コリスチンがあるが腎毒性、神経毒性の問題で使用されていない
 ・欧米ではコリスチンの有効性は評価されている→個人輸入して使っている医療機関もある
・検体から検出された腸球菌、緑膿菌が起炎菌か定着菌かの区別
・起炎菌だとして抗菌薬のみで治療可能か
・安易に抗生剤を変えず、原因が他の部分にないかの検索
・耐性菌の出現を危惧しカルバペネム系の使用を過度に制限するのも問題
 ・これは米国流の抗菌薬療法
・耐性大国の米国に比べ、日本での耐性菌検出率ははるかに低い
・2009年国内の耐性菌検出率(厚労省院内感染対策サーベイランス)
499医療機関、血液分離菌13万814株、髄液分離菌4504株
耐性菌種検出率
MRSA10.01%
VRSA(バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌)
VRE(バンコマイシン耐性腸球菌0.05%
カルバペネム耐性緑膿菌1.30%
MDRP0.18%
第3世代セファロスポリン耐性陰性桿菌0.18%
MDRAB
抗菌力の強い抗菌薬が初期治療に使われてきたから
・ガイドラインによる使用制限がなく自由に使えるから
・1970〜95年に日本で新薬が開発されたから
・欧米では古いペニシリン製剤や第一世代セファロスポリンがいまだに使われている
米国での抗菌薬の投与量は多すぎるのではないか→日本のように必要最小量で治療効果を上げる
・抗菌薬の一律投与は耐性菌を増やす→多種の抗菌薬を使い分けるのがよいのでは
・米国ではバンコマイシンのジェネリックが出てからVREが増加した
・広域抗菌薬の使用制限は初期の強力殺菌に矛盾する
・PK/PD理論はMICの測定誤差、病巣内濃度、抗菌薬の初回作用の重要性など基本事項が考慮されていない
・部位によって抗菌薬濃度は異なること、生体内では多種の常在菌が存在するのでMPC(変異株阻止濃度)の概念は成立しない
コリスチンは福島県の土壌細菌から発見された抗生物質、ポリペプチド系抗生物質
細菌の細胞膜にはエルゴステロール、人間の細胞膜にはコレステロールが多い。
コリスチンは細胞膜のエルゴステロールの攻撃する。しかし、人間の細胞膜にもダメージを与える、すなわち毒性がある。
開発当時から耐性緑膿菌に効果があったが副作用で注射薬は販売が中止されている。

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