カテ留置中の感染管理などを聞く【千葉労災病院救急・集中治療部 森脇龍太郎氏】
Q)
CDCの2002年版では”感染予防としてのインラインフィルターの使用は勧められない”の項が削除されているが?
A)
・私はインラインフィルターは使用したくないが,病棟での決定であれば使用してくださいと答えている.
・IVHとしてCVラインを長期使用の場合,細菌,エンドトキシン,真菌などもトラップしてくれるかもしれない
・エビデンスはあるのかどうか….
・集中治療領域での短期使用では重要な薬剤がトラップされる可能性がある
 ・すべての持続静注薬はフィルターより患者側から使っている
 ・フィルターを使う意味はあまりない
・ 2002年のガイドラインの記述が2011年で削除された理由はよく分からない
 ・血流感染に効果と効果がないという論文がともに出ているためではないか
・使っても使わなくてもよいが,短期間にラクテックとせいぜいビタミン剤やH2ブロッカーをいれた点滴液のみフィルターを掛けてもあまり意味がない
集中治療領域では今のところ要らない

Q)
CVカテーテルで 滴下は問題ないが、シリンジで引いた際に逆血が見られない。
こういった現症が起こった場合には 感染のリスクになるので抜去すべきか?
A)
・CV挿入時には血管内に入っていない可能性がある
・挿入1週間くらいたってこういう現象が起こったら,カテ先が血管外に出てしまった可能性
 ・放置して,大量の胸水が貯留した例を見たことがある
強く引くと血管壁に当っている場合は,少し体位を変えるとか,ゆっくり引いてみると逆血があるはず.
・うやっても逆血がない場合,カテーテルを少し抜いてみる
・どうしても逆血がない場合は,カテーテルが詰まりかかっていると考えて抜去したほうが無難ではないか.
・この状態が感染のリスクになるかどうかエビデンスは聞いたことがありません

Q)
やむをえず長期留置(1か月以上)の場合、発熱が認められなくても定期的に交換するべきか?
A)
・一般的にはカテーテル交換はルーチンには行わない
再挿入は感染も含めてリスクを増すことになる
・カテ熱が出る場合は,一刻も早く抜いて培養し,必要に応じて入れ替える
・とくに感染に強い鎖骨下ルート,末梢からのルート(PICC)の場合は発熱を含めた合併症がない場合1ヶ月過ぎても使用できる
内頸静脈は感染に弱く,1ヶ月以上持つことは少ないように思う
大腿静脈や外頸静脈は数日以内の抜去あるいは他部位への交換を原則としたほうが良いだろう.

Q)
挿入部位の消毒・処置・管理?
A)
・短期CVC挿入部位に透明ドレッシング剤を使用する場合は,7日ごとにとりかえること(2011年CDCガイドラインにも記載)
感染徴候がなければ,7日ごとでよいのではないか
・2002年CDCガイドラインでは,2%クロルヘキシジン(ヒビテン)が一番よい.
・しかし日本では皮膚の消毒は0.5%までとされているのでポピドンヨード(イソジン)が使用されている.
2011年のCDCガイドラインでは0.5%以上と改訂されたので,ヒビテンよいのかもしれない.

・クロルヘキシジンについてですが,正確性に欠けているので,訂正.
 ・この通りなら,5%ヒビテン液の10倍希釈で0.5%ヒビテン液になってわけだが
 ・正確には,2011年のCDCガイドラインでは,0.5%以上のクロルヘキシジンアルコールを推奨
 ・したがって,ヒビテンではなくて,いわゆるヒビテンアルコール
 ・実際はこういう商品はないようですが,いわゆるジェネリックがたくさん出ているようです.

Q)
カテ感染を疑って抜去後、穿刺部位さえ変更して抜去後すぐに再挿入してもよいか?
A)
・通常は場所を変えればよいと思う
・CDCガイドラインでも,感染が疑われる場合はガイドワイヤーを使用して交換しないこと=同じ部位ではダメ.
IDSA(Infectious Diseases Society of America:米国感染症学会)のガイドライン2009でのCV抜去
 ・明らかにカテーテルが原因でCRBSI(catheter related blood stream infection)から敗血症
 ・カテーテル培養と同じ菌(グラム陰性桿菌,黄色ブドウ球菌,腸球菌,真菌,抗酸菌など)が血液培養からも検出される場合
CVは抜去してほとぼりが冷めるのを待つべき
 ・抜けない(場所をかえるだけ)場合はむしろ抗菌薬をどうするかが大きな問題.


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