医療安全・質管理とヒューマンファクター
日本内科学会雑誌 Dec 10,2012

PmSHELLモデル
P:Patient患者
m:management管理
S:ソフト
H:ハード
E:Enviroment作業環境
L:Liveware(本人)
L:Liveware(同僚)




参考)
人の行動は4つの要因、Softwareソフトウェア, Hardwareハードウェア, Environment環境, Liveware人間で決定される。
航空業界などで多く利用されたモデルである。 
その境界面で起こりえる問題を分析する手法である。
現在ではそれが発展したm-SHELモデル(managementマネージメントを加えたもの)で、医療分野では関係者に患者要素(atient)を加えたPm-SHELモデルを使う。
ヒューマンエラーは不注意や意識レベルの低さだけが原因ではない
 ・航空機・原子力事故の分析結果から判明
・システムの安全向上のためには人間の特性を考慮する必要
  原子力発電所 航空機  航空管制   医療
制御対象   プラント  機体 航空機  患者 
制御対象数 1  複数  複数
不確定要素 多数 
規模  中
状態 ノーマル  ノーマル  ノーマル  アブ ノーマル
操作 直接 直接 直接  直接/間接 
過度現象 遅い  速い  遅い  遅い/速い 
事故の影響度 極めて大 大  大  小 
制御に必要なパラメータの提示 必要十分  必要十分   必要十分   不十分 
システムの制御対象の特徴
・制御対象と対象数
 
・制御対象は患者
 
・外来診察では1人、、入院では複数
 
・患者は高齢者から新生児まで多様
・不特定要素
 
・医療分野は未知の部分が多い
・制御対象の状態
 
・アブノーマルな状態を制御しなければならない
 
・制御の本質である予測が非常に困難
・制御対象への操作
 
・生体としての自己制御(間接制御)システムが複数あり→制御が困難
  ・例:水分補給や薬剤投与してバランスを取る→全体は生体の制御システム下にある

・問題解決に必要なパラメターの提示

 ・医師に提示される情報は極めて少ない。
 ・患者の状態を理解するための情報は最初からは提示されない→検査結果が分かってから
 ・患者からの情報が少ない(記憶違い、間違った回答)→制御には致命的
 ・医療システムは本質的に不完全
・医療ではリスク低減のためリスクを冒す場合もある→アブノーマルな状況を改善するために
 ・患者システムの停止は死である→非可逆的システム
・航空機システムの制御対象はノーマル状態←→医療の制御対象(患者)はアブノーマル状態→予測困難→制御困難
医療システムは産業システムと違い不完全なシステムである
・医療安全に取り組むべき課題
 ・人間への要件
  @心身機能(精神的な障害、知覚レベルの障害など)が必要レベルにあること
  A機器を扱う知識や技能があること
 ・心身機能条件
  ・医療ではパイロットのような身体的条件が明確でない→身体検査基準が必要?
・タスク遂行能力遂行能力条件
 ・医療でも訓練レベルを明確にする必要
 ・産業システムでは筆記試験合格でシステムを動かすことはない→タスク遂行に要求される技能を明確化
・機器への要件
 ・医療機器は定期点検が実施され、正常に動作することが保証されなければならない
 ・医療機器は人のエラーを誘発しない設計であること
 ・医療機器のメンテナンスをする人の能力条件を明確にすること
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