救心
m3comカンファレンス 2010/07/27 まとめ
・救心の主要成分は漢方で使われる生薬を収めた中国最古の薬物書『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』に収載
 ・製造者自身は広い意味での漢方薬と言う
・成分の内容はセンソ(下薬)/ゴオウ(上薬)/ジャコウ/ニンジン/レイヨウカク末/真珠/リュウノウ/動物胆など
・ちなみに主成分の蟾酥(せんそ)はアジアヒキガエルやヘリグロヒキガエルの耳腺分泌物を集め乾燥させたもの。
 ・日本薬局方では毒薬とされていて、極量は1日15mg(救心カプセル中に5mg入っている)
 ・錠剤なら18錠、口の中で溶かすと舌が麻痺するとの事
 ・薬理学的な主成分はブファリン、レジブフォゲニン、シノブファギン、ブホタリン等、またインドール塩基のセロトニン等、そしてエピネフリン(アドレナリン)を含む。
ジギタリスに比べ蓄積性が無いという利点があるが、透析患者では危ない。
・中身は「がまの油」である、あるいはもっと具体的に『ヒキガエルの耳下腺分泌物』
・救心は、六神丸のこと
 ・この中のセンソ-ガマの油がくせ者
  ・止血作用で有名です。
 ・センソで頻脈発作が起こったり、心筋梗塞を起こしたとの報告が散見される。
 ・軽度の心不全に使うと効果がある
 ・漢方薬では動物生薬を使ったものの方が、効果が強い
 ・知識なく使用すると危険なこともある
 ・同じ漢方薬でも植物由来のものを使った方が安全だろう
・救心株式会社のホームページにはセンソがジギタリスと同様のメカニズムで強心作用を示すと図解
・大量に服用すればジギタリス様作用はあるのかもしれない
 ・救心中毒は見たことがない
 ・数年前の日本救急学会関東地方会で救心の過量服用によりジギタリス中毒を呈した一例という症例報告
・普通に服用すれば毒にも薬にもならない
・むかしオーベンがジギ作用とISDN作用を少しずつ持ち合わせた薬と言っていた。
・この薬は心臓の民間薬の中で最も注意を要する(循環器専門医意見)
 ・理由は以下の通り
 ・救心は薬剤師資格を持たない登録販売士でも販売できる第二類OTC(パブロンの一部、コーラックと同じ)に分類
  ・情報提供も義務ではない。
 ・蝦蟇の油である蟾酥[せんそ]5.0mgを1日量中に含んでいる
  ・digitalis類似物質bufalin等bufanolidesが含まれている
  ・Digitoxinと交叉反応があり、一定の薬理作用を示す。
・Jpn Circ Jに救心過量投与の症例報告があり
・商品は異なるが、米国で蟾酥を含む漢方薬服用で死亡例あり
・riskもありますので、きちんとした規制をかけるべき薬ではないか
 ・第二類OTCでは市販後の副作用報告などの必要な情報も集積されていない
・「動悸」は不整脈、狭心症、心不全、更年期障害など種々の原因で起こる
 ・必ず医師の診断が必要。
・成分説明
 ・蟾酥 ; 心筋の収縮力を高め、血液循環を改善、余分な水分を排泄し、心臓の働きを助ける。
 ・牛黄 ; 末梢循環を改善し、心臓の働きを助ける。
 ・麝香 ; 呼吸機能を高め、全身の酸素不足を改善する。
 ・人参 ; 強壮作用により気力を高める。
 ・羚羊角末 ; 鎮静作用によりストレスなどからくる神経の緊張を和らげる。
 ・真珠 ; 鎮静作用によりストレスなどからくる神経の緊張を和らげる。
 ・龍脳 ; 気力や意識の減退を回復させる。
 ・動物胆 ; 消化器の働きをよくし、他の成分の吸収を助ける。
・よく見られる頻度の多い各種循環器疾患で起こりうる可能性
 1;虚血性心疾患→強心作用、呼吸促進作用で心臓の酸素需要増加し悪化の可能性
   ・胸痛発作時に胃腸で吸収される生薬の末梢血管拡張作用がニトロの様に1〜2分で効き出すとは考えられず。
 2:心不全→強心作用は効くかも知れないが持続時間が不明
  ・長期的にはむしろ悪い可能性大。
  ・利尿効果、末梢血管拡張作用は心不全には良いが、力価不明で十分な量か検証不可能。
 3;大動脈弁狭窄症→末期の場合、発作時に使用し血管拡張作用で血圧低下しショックの恐れ。
 4;不整脈→強心作用に心拍増加作用を伴う恐れ大。
   ・各種頻脈性不整脈が悪化。
・強心作用や精神安定作用のある生薬が入っているが、市販薬ではそれほど作用は強くないだろう。
・問題は
 ・動悸があるのに必要な検査をしないこと
 ・精神的依存により過量に服用すること。
・「救心服用で房室ブロック→緊急ペーシング」は循環器学会の地方会の症例報告
参考)
 ・「救心」錠多量服用後非持続性心室頻拍を起こした一例(日本循環器学会第64回中国地方会)
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