ER−あるDRが米国旅行中にERを受診した経験談)− |
大阪府医誌会報 2013年1月号 『交流分析』より引用 |
ちょっと興味ある記事だったので引用しました。 |
神奈川県医師会報 平成24年8月10日(NO.751)より 産婦人科医という仕事柄、大学病院や市立病院の救急センターに新生児や産婦をしばしば搬送しているが、 私自身が今回図らずも旅行先のアメリカでERを受診する羽目になってしまった。 事の発端は四年前に突然発症した不整脈に始まる。平成二十年の五月早朝、息苦しさを感じて目覚めた。 気がつくと脈がとんでいる。 胸苦しさも感じ、これは大変だと懇意の循環器内科Y医師を受診、 心房性不整脈で心配無いとのことであったが頼み込んで薬を処方してもらった。 その後時々過労になったり、ストレス過剰になった時に発症していたが、 しばらく安静にして気持ちを落ちつけると自然に治まっていたので、次第に気にならなくなり薬も全く服用していなかった。 ところが、今年五月アメリカ西海岸旅行中に発症した。ロサンゼルスに到着しホテルにチェックイン、 夕食も終わり部屋でくつろいでいる時に突然不整脈発症、 これは大変とベッドに横になり深呼吸し気持ちを落ちつけると、やや症状軽快し、そのまま就眠してしまった。 翌朝は症状軽快したので市内観光に出発しその後バスでラスベガス移動、 夕刻ラスベガスのホテル着、部屋で荷物の整理をしていると再び不整脈発症、 しかも今回は重症で正常脈二〜三回に一回不整脈発症する。 胸苦しさも感じ体が思うように動かない。 徒事ではない。 一瞬死の恐怖も感じた。 直ちに旅行保険会社のフリーダイヤルに連絡、なんと日本人のスタッフが出る。 症状発症の時期等何項目かの質問の後、医師の往診が出来るかもしれないので十分位待ってくれとのことであった。 数分後連絡あり時間外で往診できない、ラスベガス市内の病院ERに予約したから至急受診してくれとのことであった。 直ちにツアーディレクター(TD)に連絡し病院に同行して下さいと頼む。 救急車を呼ぼうかとの申出を断りイエローキャブでERを受診した。 ERはかなり混雑していたが、予約してあった為かすぐ受付が出来た。 まず旅行保険証の確認、簡単な書類の記入とサイン、その際母親の名前を聞かれる。母はとうに死亡している、 何故かと尋ねると、シークレットの為だという事であった。 十数分後、受付横のドアが開き「ユキヒコカムイン」と怒鳴るが如く呼ばれる。 挙手をしてTDと共に入ろうとするとTDはお前は駄目だと押し出されてしまった。 室内では若い事務員が再び保険証をチェックし、簡単な書類にサイン、その後看護師が症状について問診、 胸が痛いのかと聞くので痛くない不整脈だと答えると薄い着衣の上から聴診、 「えっ!これで聞こえるのかいな」と思ったが何も言わず、 再び待合室で待てと言われる。 待つこと30分、再び「ユキヒコカムイン」と怒鳴られ入室。 今度はトリアージ担当の医師受診、問診で再び胸が痛いのかと聞かれる。 痛くないアリスミアだと答えると「アリズミア」と発音を直された。 両側で血圧測定、マンシェットはビニールのデイスポ製品、指示されて検査室へ移動、ECG、胸部]P、血液検査を受ける。 ECG担当は60歳位の老婆で小さい声でぼそぼそ指示されるが全く聞こえない。 勝手に胸を出し足首を露出しなんとかECG終了、胸部]P、採血も終了し再び待合室で待てと指示される。 担当するスタッフは全て手袋着用していた。 約一時間位待たされた後、「シオツ カカムイン」と怒鳴られて呼び込まれる。 今度はTDも一緒に入れと言われて同行、奥の小部屋に入れられベッドに横になれと指示される。 上半身脱衣しよれよれの検査衣を着てストッパーが効いていないストレッチャーによじ登り横になる。 ECG、血圧、サチュレーションの連続測定が始まったが、部屋は冷房がガンガンに効いていて寒い、 寒さと疲れで血圧は200位迄上昇、頭の血管が破れるのではないかと心配になるも、 スタッフはなかなか現れず待つこと30分、ようやく医師、看護師、セクレタリーが来る。 再び胸が痛いのかと聞かれる。痛くない不整脈だと答える。 TDは今後旅行を続行していいのかとしつこく聞いていたが「ノープロブレム」の一言で許可され、 処方箋と十頁位の厚いレポートを渡され終了、 最後にまた会計の受付で旅行保険証を厳重にチェックされ「ノーペイ」と言われ専用出口より送り出された。 薬局は何処だと聞くとタクシードライバーが知っているの一言であった。ERの滞在は約4時間であった。 その後は全てTDが仕切ってくれたがタクシーに乗り、 運転手が最初に連れていってくれたスーパー(セブンイレブン)は時間外で処方出来ず、 市の郊外にある24時間営業の薬局でようやく薬を入手出来たが 薬局も混んでいて待たされること40分、 ホテルに帰りついたのは出発から5時間後の翌日午前0時30分であった。 TDによるとアメリカでERを受診すると四〜五時間かかるのは常識とか、 迅速で手際よく、親切、しかも安い医療費の日本の医療の素晴らしさ をもっともっとPRすべきだとつくづくと実感した。 数時間待たされたER待合室の壁に大きく「Helping you feel bettER fast ER」の張り紙があり、 アメリカ人も酒落が解るんだなと感心。 しかし一語訂正。fastERではなくslowERではないだろうか。 翌朝、不整脈は軽快し、無事モニューメントバレー、グランドキャニオン、ヨセミテと定番のコースを廻り無事日本に帰国した。 薬の効きはいいようだ。 |
私見) 海外旅行される方は病気にご注意を・・・ |