爪はがし事件のてんまつ
Nikkei Medical 2011.11
・2007年6月11日脳梗塞で入院中の患者(当時89才)右足親指の浮いた爪をニッパーで3分の2除去した
・同年6月15日くも膜下出血後遺症で入院中の患者(当時70才)右足中指の根元のみくっついた爪をつまんで取り去った
・この行為が院内で問題となり、病院が記者会見を開き公表
・6月26日刑事告発、同看護師を傷害容疑で逮捕
・一審で看護行為に該当しないとして有罪、懲役6ヶ月、執行猶予3年
 ・正当な医療業務行為の判断基準
  @看護の目的で行われている
  A看護行為として必要な手段、方法において相当な行為である
  B患者側の承諾がある

・控訴審では傷害罪は否定され無罪となった。
 ・入院患者の場合、入院計画書を本人、家族が承諾することで爪ケアも含めて承諾したものとみる
 ・被告の違法性はない
 ・控訴審では自白調書の信用性を否定したの勝訴の大きな要因
 ・浮いた爪を切って爪床を露出させることを爪はがしとは表現しない
   ・この表現は捜査官の誘導の疑いありと判断された
   ・出血の状態にも誇張がある
医療機関は捜査機関ではないので事実の認定や行為の評価には慎重であるべき
・第三者機関『尊厳擁護専門委員会』は虐待行為と判断した根拠
 @必要性がない措置だった
 A医師の指示を仰がず行った
 B上司の看護師の中止指示を無視した
 C意思表示が出来ない患者に行った
 D相当な苦痛があった
 Eケアの記録がなかった
 F家族への説明がなかった
・今回の教訓として
 ・A、Bについては上司とコミュニケーションをとるべきだった
 ・チーム医療として取り組むべきだった 
 ・通常と異なる医療行為は院内のカンファレンスで検討すべきだった
・自白調書について
 ・自白調書にいったんサインをすると覆すのは極めて困難
 ・拘留中は外界と遮断され、極限状態に追い込まれる
 ・サインして一刻も早く楽になりたいという心理になる
 ・自分の意図とは異なる調書にサインをしてしまう危険性がある
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