認知症患者の胃ろう研究 終末期への対応
笠間睦 (かさま・あつし) 2013年4月19日
m3com https://jdoctors.m3.com/group/82/thread/411/message/1977より
終末期に栄養管理を行うことでどの程度の延命効果が期待できるのか?
(宮岸隆司:高齢者終末期における人工栄養に関する調査. 日本老年医学会雑誌 Vol.44 219-223 2007)、
  平均余命 
経管栄養  827±576日
中心静脈栄養 827±576日
人工栄養非選択 60±40日
※経管栄養から中心静脈栄養に変更した症例および中心静脈栄養のみの症例
末梢からの点滴に比べて、平均的には767日(約2年1カ月)程度延命できる

○胃瘻造設931例を対象とした国内の全国調査、
・造設1年後の死亡率は34%
・4分の1は1,647日以上生存
・海外と比べ日本では管理の質の高い
・日本では比較的軽症の患者に胃瘻が作られている可能性がある。
・胃瘻を作ることにより生存期間が延びたかどうかについてはデータがない
 ・胃瘻を作らないコントロール群の患者がいない

○胃ろうは“延命”と拒否するご家族に対してどう説明するか?
 ・医師へのアンケートでは胃ろうのメリット・デメリットについて「説明する」という回答が97.44%

○胃ろうを拒否だがIVHを希望するご家族に対しての説明は?
・以下の2点をまず最初に説明
 1、「経腸栄養が禁忌で、静脈栄養の絶対適応は、汎発性腹膜炎、腸閉塞、難治性嘔吐、麻痺性イレウス、難治性下痢、活動性の消化管出血など。」
 2、「4週間以上の長期にわたる経腸栄養を施行する場合はPEGの適応であり、PEGを選択することを推奨する。」
・さらにIVHのリスクの説明
 ・IVHでカテーテルを長期に留置すると感染症(菌血症)併発の危険性が高くなる。
 ※現時点で最も感染率が低いとされる上腕PICC(peripherally inserted central catheter)でも留置日数13,989日間(平均留置日数33.8日)でカテーテル感染は2.4%(10本)に発生。

○胃ろうには、「一生、経口摂取できないから造る胃ろう」と、「全身状態が悪化時だけの一時的な治療的胃ろう」とがある。
 ・「延命」目的の胃ろうと「栄養管理」目的の胃ろうは、きちんと分けて議論する必要あり。
 ・胃ろうから栄養を取りながら脱脂綿で少しずつ日本酒を毎日晩酌をする終末期の患者さんもいる。
 (2013年2月10日発行日経メディカルNo.543 51-59)→胃ろうのメリット

○笠間医師の勤務する三重県津市の榊原白鳳病院3階療養病床(59床)の2014年6月の栄養管理の状況
栄養管理 人数   
PEG(チューブ型)  16名  
PEG(ボタン型)  15名  
経鼻胃管栄養法  16名 14名は急性期病院でPEG希望せず経鼻経管続行
2名は胃部分切除のためPEG不可 
7名自己抜去のためミトンで拘束要
完全静脈栄養(TPN):1名  1名  
末梢点滴  1名  
経口摂取  10名  
合計 59名   
 ・2012年度老人保健健康増進等事業『胃ろう造設及び造設後の転帰等に関する調査研究事業』の報告で
 胃ろう造設者(1467)に対して入院前後に嚥下機能評価実施57.1%、未実施22.9%
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