大都市における在宅医療者に対する地域医師会の役割Ⅰ
         -府民と医師会員の意識の乖離-
府医ニュース 2015.05.06
 在宅医療について、平成23年府民調査および25年度会員意見調査の結果を見ると、在宅医療を受ける側(府民) と、提供側(医師)の意識が乖離していることが分かる。
 まず、会員意見調査では、患者が在宅医療を希望した場合、「継続的に診療している等、患者によっては対応する」が28.6%が最も多い(図①)。


また、在宅医療を行っていないが「条件が整えば取り組みたい」と回答した診療所長に、在宅医療推進に必要な要件を尋ねたところ「患者や家族の理解・協力を得ること」の61.9%に次いで「患者がかかりつけ医を持つこと」が50.7%と多((図➁)、府民が在宅医療を受けるにあたり、かかりつけ医を持つことが重要と考える傾向が窺える。


 一方、府民調査では、かかりつけ医を「決めている」は66.44%にとどまり、「決めていない」が、60歳代で20.1%、70歳以上でも9.4%存在した。
 また、かかりつけ医の選択理由として 「夜間でも対応してくれる」、必要に応じて往診してくれる」との回答は、70歳以上でそれぞれ5.1%、8.2%であった。在宅医療についての項目では、終末期を「できる限り自宅で療養したい」と46.2%が回答し、自宅以外を選択した理由も「家族に負担をかけたくない」がいずれの年齢層においても7割以上を占めた(図③)。


 府民調査の結果から、家族に迷惑をかけない等、一定条件が整えは自宅での療養を希望しており、在宅医療のニーズがあることが読み取れる。
 「かかりつけ医」を持つ府民の割合は年々増加しており、医師会が進める「かかりつけ医推進・普及」啓発が効果を上げていることはうかがえるものの、府民と医師で「在宅医療において求めるかかりつけ医」に対する意識の違いが認められる。これは、人間関係がすでに構築されている「かかりつけ患者なら診る」としている医師に対し、将来の在宅療屋を考慮しない高齢府民が増えているからではないだろうか。

 現在、進められている多職種連携がさらに機能すれば、在宅医療・介護をチームで行うことができる。しかし、「かかりつけ患者」であれば診るという声も意外と大きかったということを調査して初めて知った。実際のところ、在宅医療とは「かかりつけ患者・医」の信頼関係があってこそ継続できるものであり、知らない患者から、いきなり「在宅医療を」と言われても積極的には引き受けたくない、という気持ちが現れているのではないだろうか。
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