地域医療構想((ビジョン)って、また病床数の削減ですか?
堺市医師会報 2015年9月号
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 さて、地域医療構想の話です。地域医療構想は、言うなれば、地域包括ケアシステムを支える医療の根幹です。
この地域医療構想について、ご存知の先生方も多いとは存じますが、ご説明させていただきます。
 平成26年度から
①「病床機能報告制度」が始まりました。
②平成27年度から「地域医療構想(ビジョン)の策定」が始まっています。
この二つの制度は密接に関係しています。

以下は、厚生労働省のホームページからです。

「病床樵能報告制度」とは、「医療機関が、その有する病床において担っている医療機能の現状と今後の方向を選択し、病棟単位で都道府県に報告する制度を設け、医療機関の自主的な取組みを進める。」

「地域医療構想(ビジョン)の策定」とは、「都道府県は、地域の医療需要の将来推計や報告された情報等を活用して、二次医療圏等ごとの各医療機能の将来の必要量を含め、その地域にふさわしいバランスのとれた医療機能の分化と連携を適切に推進するための地域医療のビジョンを策定し、医療計画に新たに盛り込み、さらなる機能分化を推進。国は、都道府県における地域医療構想(ビジョン)策定のためのガイドラインを策定する(平成26年度~)」です。

 そして、地域医療構想(ビジョン)の内容は、以下の通りです。
1.2025年の医療需要
 入院・外来別・疾患別患者数等を、2025年の人口動態推計に合わせて見込みなさい。
2.2025年に目指すべき医療供給体制 
 二次医療圏等(在宅医療・地域包括ケアについては市町村)ごとの医療機能別の必要量 (!)に応じて、病床機能を調整しなさい。
3.目指すべき医療供給体制を実現するための施策 医療機能の分化・連携を進めるための施設設備、医療従事者の確保・養成を行いなさい。

 ご存知のように、病床の機能は、高度急性期、急性期、回復期、慢性期に分けられますが、その慢性期病床について、「療養病床の入院受療率が最も低い県の水準まで低下させて、その受け皿として在宅医療の整備を進める」という指針が示されています。この入院受療率が最も低い県は、長野県で0.122%です。全国の中央値が0.213%ですから、ざっと約40%の削減をしなければならない計算になります。本当に、このようなことができるのでしょうか。

 去る7月29日に大阪府堺市保健医療協議会が堺市本庁で開かれました。そこで、大阪府の担当者が堺市における地域医療構想について説明されました。
 つまり、現在の機能病床数と、国のガイドラインにより算出された2025年に目指すべき医療供給体制との比較を述べられたのです。その比較では、高度急性期の病床数が約200足りず、急性期の病床数が約300多く、回復期の病床数が約1500足りず、慢性期の病床数が約1000多いとのことでした。
では、急性期と慢性期の多い病床を回復期に変えるのでしょうか
それが病床機能の最適化なのでしょうか。
そして、その変更を強制する権限が都道府県、つまり大阪府にあるのでしょうか

 平成27年6月18日付けで、厚生労働省医政局地域医療計画課長から各都道府県衛生担当部長にあてた通知があります。ここでは、「昨年の医療法改正で都道府県知事の対応の規定を新設したが、不足している医療機能の充足等を求めるものなどであり、稼働している病床を削減させるような権限は存在しないこと」と、明言されています。

 この地域医療構想は、病院に勤務される先生方のみならず、われわれ開業医にとっても、医療環境が激変するわけですから影響を受けるのは必定です。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・略
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