TPPと医療
〇TPPは医療の世界にも影響を与える?
 ・将来的には大きな影響を受ける可能性あり
 ・政府の新成長戦略素案に掲げられた「患者申出療養(仮称)」で議論されている「混合診療」の解禁の可能性
 ・「混合診療」が認められると、保険の範囲の治療は保険で、それ以外は個人負担
  ※現行では、健康保の範囲以外の診療を受ると、本来保険でカバーされる分も自己負担になる
 ・お金のある人しか高度な医療が受けらない。
〇外国企業が医療界に参入するか?
 ・医薬品や医療機器の輸入がこれまで以上に自由化される
 ・日本の医師国家試験に合格した医師以外にTPP解禁で法制度が変わり、医療を行える可能性 
○国際投資紛争解決センターISDS(またはISD)条項
 投資先の国の法律などで不利益を被った場合、ICSIDに提訴し、投資先国政府に対し賠償を求めることができる。
 ICSIDの採決には強制力があり、公共の利益は考慮されず、「投資家がどれほど被害を被ったか」という観点だけで審議される。
 アメリカの製薬会社がカナダで新薬の特許を申請したが、臨床試験が不十分として特許を認めず。
 米製薬会社はカナダの裁判所に提訴したが却下されたが、ICSIDに提訴し勝訴。
 カナダ政府に1億ドルもの賠償請求が決定。
 このことは、その国の法律よりも、ICSIDの判決が優先されるということ。
○TPPと生命保険
終身保険(死亡保障)  例
死亡時  払込総額 30年分割、1月支払額 10年後解約時の払い戻し金 
日 本 1000万円 650万円 18,000円  750万円(115%)
アメリカ 10万ドル(約1000万円 3万ドル(約300万円)  8,300円  600万円 (200%)
日本と比較して、アメリカの生命保険料は安い、
上記のような生命保険が現実に輸入されたら、日本の生命保険会社はまったく勝負にならない。
ただし、生命保険契約者保護機構の対象外である。
万一、生命保険会社が破綻した場合、保護機構は、破綻した生命保険会社の契約を引き継ぐ「救済保険会社」への資金援助や「救済保険会社」が現われない場合、保護機構の子会社として設立される承継保険会社への保険契約の承継)、または「保護機構」自らが契約の引受け)を行うことで、保険契約を継続させ、保険契約者の保護を図るシステム。
○TPPと保険外診療
・日本では、健康保険を使う「保険診療」と、適応外の「自由診療」を同時に使うことは「混合診療の禁止」で原則としてできない。
 国の審査を受けていない自由診療は自己責任で可能だが、健康保険が適用される治療も全額自己負担が必要。
 一見、不都合に見えるが、混合診療の禁止は、金の有無に関わらず、平等に必要な医療を受けられることである。
 アメリカの医薬品・医療機器メーカー、民間保険会社は、日本の皆保険制度や混合診療の禁止は「規制」「障害」と考えている。
 アメリカは日本の医療への市場開放を強く要求している。
〇混合診療解禁で高額の民間保険に入らざるを得ない
 自由診療に部分的に健康保険が適用されると公的負担は増大するので政府としては困る。
 病院や製薬会社は、もうかる保険外診療に力を入れ、保険適用されるはずの新治療や新薬が、保険外のままにされ、
 公的な健康保険制度が意味をなさなくなる。
 高額な医療費を払うために、民間の医療保険に入らざるをえなくなる。
 そうなると、アメリカの保険会社が入ってくるだろう。
 アメリカのように高水準の医療を受けるため、高額の民間保険への加入が必要になるかもしれない。
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