低用量モルヒネは心不全患者の呼吸困難を安全に緩和する
2015.05.08 Medical Tribune
モルヒネは呼吸困難や疼痛の症状緩和目的で使用する薬剤であり,適切に用いれば呼吸抑制や意識障害を来すことなく会話や食事摂取も可能だ。鎮静を目的として使用するべき薬剤ではないことは大事な点だ
表 1 心不全に対するオピオイド投与の適格基準
1)肥大症性心不全で入院を繰り返し、心不全に伴うと考えられる、呼吸困難感、疼痛に対して症状緩和を目的としてオピオイドの投与を行う。
2)複数の医師により、不応性の心不全状態にあり、症状緩和が病態的、身体的かつ倫理的に適性であることが確認される。
3)同意取得時の年齢が20才以上である。
4)患者本人もしくは身体的状況等の理由で患者本人からの同意が困難な場合、家族からの文書による同意が得られている。 
表2 除外基準
1)意識障害がある
2)血圧低下がある(SBP 80mmHg以下)
3)呼吸抑制状態にある(呼吸数10回以下)
4)呼吸困難感、疼痛の原因が心不全以外にある
5)オピオイドに対し過敏症を含めた有害事象の既往歴がある
表3 兵庫県立姫路循環器センターのオピオイド使用プロトコル
Ⅰ.内服投与
➀モルヒネ塩酸塩錠5mgで開始(腎機能eGFR<30ml/分/1.73m2、その他主治医判断で2.5mgで開始)、6時間毎に内服
呼吸数10回/分を維持。8回以下で投与量を漸減。効果判定は投与1時間後
③安静時呼吸困難感もしくは疼痛が強く、有害事象、傾眠傾向が認められない場合、24時間毎に1.5倍まで増量可(担当医判断で同量維持可)
④1日量が安定した時点でモルヒネ徐放錠(MSコンチン、カディアン等)へ変更
⑤最大投与量120mg/日
Ⅱ.持続静注、皮下注(シリンジポンプ使用)
➀塩酸モルヒネ10mg+生食46ml(計48ml)、10mg/日(2.0ml/hr)で開始(腎機能eGFR<30ml/分/1.73m2、その他主治医判断で5mg/日で開始)
呼吸数10回/分を維持。8回以下で投与量を漸減
③安静時呼吸困難感、疼痛の強い場合、1時間早送り
④安静時呼吸困難感もしくは疼痛が強く、有害事象、傾眠傾向が認められない場合、24時間毎に1.5倍まで増量可(担当医判断で同量維持可)
⑤最大投与量60mg/日
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