1498:ヘパリン起因性血小板減少症 HIT(Heparin Induced Thrombocytopenia)
〇発生頻度
ヘパリン投与患者の3~5%に発症がみられる。
HITでの血栓症発症率は30~50%と言われる
 〇原因と分類
①HIⅠ:ヘパリン自身の血小板活性化能に起因する
ヘパリン結合により血小板を活性化し、血腫板の小凝集塊作る。
ADPやコラーゲンによる血小板凝集を促進する
ヘパリン投与後1~4日後に血小板が減少する。10万以下になることはない。そのままヘパリンを継続して様子をみる。
②HITⅡ:自己抗体産生が原因(こちらが重要になる)
ヘパリンとPF4(Platelet Factor4)に対する抗体である抗ヘパリンPF4複合体抗体(IgG)が産生されるため起こる。この自己抗体は血小板を活性化させ、血小板凝集を起こす。
ヘパリン投与後5~14日後(平均10日)に発症する。
低分子ヘパリンの方が抗体産生を起こしにくい。
以前にヘパリン投与を受け、この抗体を有する人はもっと早く発症する。
血小板は2万以下になることはまれだが、5万くらいにはなることあり、動静脈血栓(肺塞栓などの静脈塞栓、脳梗塞・四肢虚血などの動脈塞栓)が問題になる。
(Chest 2012[PMID:22315270])
(Blood 2006{PMID:16304054})
一度HITを発症すると、ヘパリンを中止して100日以内に再投与すると数時間以内に再発する劇症タイプがある。
〇治療
・ヘパリンの使用中止
低分子ヘパリンも使用しない
・アルガトロバン(ノバスタンスロンノン)の持続静注
血小板数が正常化するまで使用する
・ワーファリンは最初から使用しない,皮膚壊死を起こすので禁忌
使用は血小板機能が元に戻るか、15万以上なったらアルガトロバンと併用(最低5日間)して使用
・血栓症がなかっても最低4週間は抗凝固を行う。血栓症がある場合は3~6ヶ月抗凝固を行う
※抗凝固の期間については明確なエビデンスはない。
・血小板輸血をしてはいけない
※動脈圧測定ライン・中心静脈圧測定ラインの凝固防止にためのヘパリンを中止
※ヘパリンコーティングの使用を中止
 血小板第4因子、ヘパリン複合抗体(ヘパリン抗体)の測定が可能
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