基地局周辺で『健康被害』
京都弁護士会 設置規制要望へ
2005.3.27 毎日新聞
動画のやり取りも可能な第3世代携帯電話(3G)の基地局急増に伴い、健康への影響を心配する住民と携帯電話会社間のトラブルが全国で少なくとも200件以上起きていることが、市民団体「電磁波問題市民研究会」 (事務局・千葉県船橋市)の調べで分かった。基地局から放射される38のマイクロ波(電磁波の一種)は人体への影響がより強いとの研究報告があり、住民が健康被害を訴えるケースも出ている。このため国に設置規制などを求めようと、京都弁護士会は今月中にも、日本弁護士連合会に要望書を提出する。
  自然界にない電磁波
元京大講師で『電磁波環境研究所』(京都府宇治市)所長の萩野晃也さんの話
国際ガイドラインの基準は、短時間の影響のみ考慮して決められた。特に3Gのマイクロ波は自然界にまったくない種類の電磁波で危険性が高い可能性がある。人の生命や健康に悪影響が及ぶ恐れがある場合、科学的証明が不十分でも、防護対策をする「予防原則」の立場から、住宅地や学校、病院周辺からは距離を取るなどの法規制が必要だ。
 
 総務省移動通信課によると、基地局は全国に8万5792局(昨年12月現在)ある。設置に国の規制はなく、盛岡市など一部自治体が条例などで規制しているが、無秩序に増え続けている。

 同研究会によると、トラブルは全国42都道府県に広がっており、30が普及し始めた02年ごろから急増。熊本市では住民が基地局の撤去を求め、携帯電話会社を提訴。東京都裸馬区では、マンション屋上への設置を巡り、住民らが約8600人の書名と陳情書を区議会に提出した。着工時にはもみ合いになる騒ぎになった。

 基地局のマイクロ波にづいて、同省は「環境健康基準値内で人体への問題はない」としている。

しかし、長期被ばくの十分な研究データがないうえ、フランスやオランダなどでは人体への影響を示す研究が報告され、世界保健機関(WHO)も08年ごろをめどに新基準値を発表する予定だ。

 電磁波を巡っては、これまで家電製品や送電線なども問題になっており、電磁波問題に取り組む弁護士を中心に、京都弁護士会がプロジェクトチームを結成。基地局の 設置場所規制や住民への説明会を義務付けるなど据置を国に提言するよう求める要望書を日本弁弁護士会連合会に提出する。

 同プロジェクトは座長の山崎浩一弁護士は『安全性の検証が追いついてない現段階では、設置場所については慎重な姿勢を取るべきだ』と話している。 
携帯電話基地局
 携帯電話から出るマイクロことば波を受信、中継する役割を果たし、数`の範囲をカバー。携帯電話端末と定期的に交信するため、基地局自身もマイクロ波を発信している。郊外や住宅地では高さ30〜50bの電波鉄塔型、都市部ではマンション、ビル屋上に設置される型が多い。放射される周波数は、第1、第2世代が0.8ギガヘルツ帯と1.5ギガヘルツル帯だったのに対し、3Gは2.0ギガヘルツ帯と、より強力になった。

※私見
 周波数の上昇と出力は関係ないのでこの説明は少しおかしい。

 「エンジンのような低音が頭の中で24時間響き、まともに眠れない」。
仙台市太白区の元会社員の男性60)は、携帯電話基地局が稼働した後に始まった自覚症状に、やり場のない怒りをぶつける。全国各地で相次か基地局を巡る住民と携帯電話会社のトラブル。放射されるマイクロ波と健康被害の因果関係は、酪確になっていないため、多くの住民の声は、なかなか届かない。被害を訴える住民らは「耳を傾けてほしい」と切実に話す。 
 
 この男性の自宅から約100b離れた場所に、02年と04年、2社が鉄塔2基(高さ約30bと40b)を相次いで建設。半年ほどして遵和感を感じ始め、さらに数カ月後、エンジン音〃が止まらない状態になった。病院の検査では、異常なしと診断されたという。

 だが男性は「基地局から離れると、音は次第におさまる。自宅とは別の場所で音が聞こえた場合、近くに必ず基地局がある」と主張。住民に調査したところ、約10人が体調不良を訴え、男性と同様のエンジン音″に悩む住民もいたという。このため住民らは携帯電話会社に健康被害と基地局撤去を訴えたが、「基準は満たしている」の→点張り。
総務省も同じ反応だったという。

一方、屋上に設置された基地局の撤去を求める東京都練馬区のマンションでは、96世帯のうち9割以上の住民が健康被害を懸念。昨年3月の稼働後、子どもを抱える複数の家族が退室したという。4月に小学校に入学する子どもを持つ女性は「子どもの健康を守りたいと患えば不安。費用はかかるが引っ越したい」と話した。

 長野県高遠町の男性(45)は、自宅から約250b先に基地局が建設されて2年目以降、頭痛や食欲不振に悩まされた。妻や2人の子どもも体調が優れず、昨年転居したところ症状が改善したという。 

 携帯電話会社大手のNTTドコモ(東京都千代田区)広報部は「健康被害はありえない」とコメント。

 総務省は「現在の科学的知見では今の規制で適切。心配なら子どもの寝る場所を電磁波の届きにくい場所に移動するなど、各個人が対策を取るのが適当」としている。

 これに対し、市民団体「電磁波問題市民研究会」(千葉県船橋市)事務居長の大久保貞利さん(56)は「住民は電磁波にさらされ続け、深刻な被害が出たころには手遅れになりかねない」と批判している。

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