高齢者って何歳からだろう?
2005.3.27 日経新聞
 ◆身近では
 全国老人クラブ連合会(東京都千代田区)によると、高齢化が進んでいるにもかかわらず、「老人クラブ」の会員数は98年の886万人をピークに減る傾向にある。会員資格は「60歳から」。会員は全国で約843万人(04年3月現在)という。

事務局は「最近は老人クラブに限らず、組織に入るのを好まない人が増えているからだろう」と分析する。

 シルバー人材センターは、会員になれる年齢を「原則として60歳以上」にしている(全国シルバー人材センター事業協会)。

 東京都の発行する格安の「シルバーパス」の対象は、希望する70歳以上の都民。都営地下鉄や都内の民営バスなどに乗車できる。

 国際協力機構(JICÅ)の事業で、開発途上国で活動する「シニア海外ボランティア」の応募資格は「満40歳から69歳」と幅広い。

 ◆健康度
 日本大学人口研究所次長の小川直宏・日大教授燭磨齢者のとらえ方は、人口の伸びや、年功序列などの黄金制度の変化、雷の受給開始年齢など社会経済的な要因とともに変化するという。「高齢者の年齢はどんどん変わるべきです」

 日本マスターズ水泳協会の大会記録を10年前と比較しても、お年寄りの体力が向上しているのは明らかだ。小川さんは、健康な高齢者が増えている傾向を踏まえ、高齢者の定義を年齢ではなく健康状態で決めるという独自の提案をする。

 「例えば血圧などの複数の基準で健康度を求め、年齢にかわる高齢の段階を決める。少子高齢化がさらに進んで年金などの社会保障制度の維持が厳しくなれば、健康状態に合わせた利用もあり得るのではないか。年齢にこだわらないというエイジレスをも想定する時代です」と話している。

 ◆国際的には
 国際的には60歳と65歳が混在している。開発途上国では60歳を採用するところが多い。

 国内外の少子高齢化を調査研究する社団法人エイジング総合研究センター専務理事の吉田成良さんによると、国連の専門家会議で社会保障や高齢者問題を取り上げる際には60歳以上が基準だ。例えば02年にスペインで開かれた「高齢化に関する世界会議」ではオールド(老年)を60歳以上にした。

 国運や国際的な人口統計では「老年人口」を65歳以上でまとめている。

 吉田さんは、「何歳からは高齢者、という定義はできない。寿命の変化などによって、変わっていくものではないでしょうか」と説明する。

◆国の施策では 国の統計は「65歳以上」根拠は不明…・
 「高齢」を国の尺度でみると、なじみ深いのは「高齢化率」だ。総人口に占める65歳以上の割合を示す。日本は上がり続けており、現在19・5%だ。

 総務省によると、国勢調査では「老年人口」という用語で65歳以上の統計をとっている。この年、齢は、1965年より前の国勢調査では「60歳以上」だった。平均余命が延びたことなどから引き上げられた。

 同省国勢統計課は「一度調べたが、特にどこかが『65歳以上にする』と文面もない。65才以上を老年人口にする先進国が多いのも理由にあったのか……」とはっきりしたことが分からない様子。

 65歳という区切りは社会保障制度でおなじみだろう。介護保険で介護サービスを受けられる第1号被保険者や、公的年金の基礎年金をもらい始めるのは、65歳からだ。
 しかし、定年退職などに関する「高年齢者雇用安定法」という法律の「高年齢者」は55歳以上を指す。

 さらに、住宅政策をみれば、国土交通省と厚生労働省が支援し、高齢者の入居しやすい貸賃住宅の安定確保などに取り組む「高齢者住宅財団」の対象は、60歳以上だ。 施策の中心がどこにあるかで、とらえ方が違っているのだ。


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