ジェネリツク医薬品は先発品と同等
日経CME 経営版 2005.5
患者さんへのサービスには価格の安さも大切
  DPC導入を契機としたジェネリック品への処方変更の流れ、価格の 低さは魅力だが、その安全性や生物学的同等性はどうか。国立衛生試験所(現在の国立医薬品食品衛生研究所)で長年に渡りジェネリツク医薬品の調査に携わってきた、緒方宏泰氏(明治薬科大学教授)に聞いた。
信頼区間法を用いた評価で同等性を保証
「1982年にジェネリック医薬品の同等性試験の方法を大きく変え、現在のガイドラインの基礎を公表しました。原則、人
を対象に試験を行うこと、同等であることの統計評価方法を仮説検定法に検出力の概念を新たに加えることを主要な内容としたものでした。この時点で既に日本のジェネリック品の品質は保証される体制に入ったのです」と緒方教授は言う。

「仮説検定法でも『同等である』と言うことはできます。『統計的に先発品との差があるとはいえない』という意味で『同等』とします。この方法だけでは『同等でない』ものを『同等』と評価する危険性に歯止めがかかりません。そこで、『同等である』とするためには、その試験が『同等でないものを同等とする危険性が20%以下である』試験を用いたというしっかりとした保証がつけられないと、同等とは判断しないようにしようということにしました。これが検出力を付加したということです。しかし、これでも現在から考えると十分とは言えませんでした」(緒方氏)。それを是正するため1997年に琴訂されたガイドラインで
は「90%信頼区間法」を採用した。

90%信娠区間法では、確実にあるレンジの中に入っている、つまり、『血中での薬剤の濃度が重なる』ということを証明しています。これで統計的に『同等である』と強く言えるようになりました。

1982年のガイドラインでは、若干ですが消費者保護に甘さがあったことは事実です。しかし1997年改訂版のガイドラインでは、消費者である患者さんの利益をより重視したものになっています」と話す。

 調査法が変わった理由として緒方氏は、
@世界的なレベルでのジェネリック医薬品の社会的なニーズの高まり
A国内外での学問的、経験的蓄積を挙げる。

「1982年のジェネリック医薬品の同等性のガイドラインが出された背景には、当時、ジェネリック医薬品の一部に非同等な医薬品が認められるという研究発表がなされたことがありました。世界的に関心が高まり、原因究明、試験方法の再検討などが行われました。わが国においても、実情調査と合わせ、同等性試験の根本的な調査が行われ、従来の方法を抜本的に変える試験方法がガイドラインとして出されました。しかし、今から考えれば、不十分な点を一部残したものであったと思います。とにかく、抜本的に方法を変え、同等性を保証する体制に切り替えることが当時の主眼でした」(緒方教授)。

 しかし、1997年の改訂では、国際的な合意の基にWHOのガイドラインが出されたことを契機に、より科学的で合理的な試験方法がガイドラインにまとめられた。また、我が国の状況、医薬分業の進展や医療費の高騰、そして患者負担増などの社会的な要求も踏まえて、より「患者保護」に重点を置いたジェネリック医薬品を提供するという視点で進められた。さらに日本メーカーの技術も飛躍的に向上し、ジェネリック医薬品の品質も格段に向上していたという理由もある。

血中満席が向じならば溶出試験の差は無意味
 「1982年から既に行われていますが、人、それも同じ人に先発品とジェネリック医薬品を服用していただき、その血中の薬剤濃度の差で同等性を判定しています。原薬は同じですから、違うのは製剤の技術です。崩壊度、粒子の状態などは各社ごとに違っていますが、それは構いません。重要なのは先発品と血中濃度が重なる、という点なのです」と緒方氏は力説する。これは一部に、崩壊度の差や粒子の状態の差を問題視する声があるからだ。

「ジェネリック品の同等性を問題にする方の多くが、溶出試験のデータを用い、『こんなに違う』と言う傾向がありますが、人の体内に入った時に「同じ濃度」であることが一番大切なのです。

我々の体とビーカーの中では条件が違うために、溶出試験データのみから体内での濃度を推定することはほとんど不可能なのです。ですから、人を対象とした同等性試験で同等であることを確認しているのです」(緒方氏)。

 さらに、「各メーカが出しているデータを基に、ジェネリック医薬品の体内での濃度が先発医薬品のものと『こんなに違う』と言う方もおられます。人には大きな個体差があります。そのため、異なる人に異なる医薬品を服用して頂きますと、体内での濃度が医薬品間で同じであるかを比較判定することは大変なことになります。そこで、同一人物に先発品とジェネリック医薬品を服用していただき、その血中濃度の重なりを調べるという方法をとっています。このような方法で、科学的に同等であることを調べています。

ですから、『違う』ということはあり得ません。データの取り上げ方に問題があるのです。先発とA社、先発とB社という形で比較試験がなされていますが、ある試験での先発医薬品のみの体内での濃度、A社のみの濃度、B社のみの濃度を切り離して比較しますと、当然、試験に参加された被験者が違いますし、試験の条件も全く同じではありませんので、異なることが普通です。同等性試験は、同一条件で相対比較しているのですから、同一条件での相対比較のデータを示すことが必要で、個々に切り離した絶対値で議論することには意味がありません」とも言う。

肝心の製造技術に関して緒方氏から見ても、「よくも、これだけ難しい原薬を使って、さらに特許のスキマをぬって、これだけの薬を作ってきたものだと感心するような出来栄えのジェネリック医薬品も多々ありました。中には、先発品よりも製剤技術が高いと判断できるものさえ認められます。『先発品に血中濃度を合わせる』という観点から、レベルを下げてもらったものまであります」という。安くて、質がよければ、何よりも患者さんのためになる米国やドイツ、イギリスではジェネリック医薬品のシェアは、数量ベースで5割を超えている。これに対して日本のジェネリック品のシェアは12%と極めて低い

「『DPCの導入で注射剤をジェネリック品に変えたが大丈夫だろうか』などというご相談を受けたこともありますが、静脈内注射剤は直接、静脈内に授与しますので、先発品もジェネリック品も、もともと、有効性、安全性に差はありません。あったのはブランド信仰だけです」(緒方氏)。入院ではDPC、外来では患者負担増という要因から、今後はジェネリック医薬品のニーズが高くなるだろうと緒方氏は予測している。

 年金生活をしているお年寄りで、慢性期疾患に苦しんでいる場合などは、薬代の患者一部負担も相当な出費となる。

「生物学的に同等な医薬品を安価に提供していくことも医療関係者の役目です」と、緒方氏は結んだ。
私見)
この記事をそのまま鵜呑みには出来ないが、今後はこのような方向になるのだろう。

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