病原ウイルス除去効果に対する調査で判明
せっけんと流水による手洗いが最も有効
2005.5.19 Medical Tribune
American Journal of Infection Control(2005; 33: 67-77)
“10秒間の手洗い”で調査
Sickbert-Bennett博士らは,ボランティアとして参加した成人62例を対象に14種類の手洗い用製剤の細菌・ウイルス除去効果を調査した。細菌とウイルスの除去効果を同時に調べた研究は初めてという。

また,わずか10秒間の手洗いで手洗い用製剤の効果を調査するのも初めてであった。10秒間というのは,多忙な医療従事者が病院で手指の洗浄または消毒にかける平均的な時間。これまでの研究では,被験者に30秒ほどかけて手洗いをしてもらっていた。しかし医療従事者は通常,手洗いにそれほど時間をかけることはない。同博士らは「現実的な条件下で調査したかった」としている。

まず,被験者に手を消毒させてからSerratia marcescensとMS2バクテリオファージで汚染させた。これらは無害な細菌とウイルスで,病原微生物の代わりに用いられる。汚染させた後,種々の手洗い用製剤で洗浄させ,洗浄後に残存している細菌・ウイルス量を定量した。14種類の手洗い用製剤それぞれにつき 5 回評価を行った。

その結果,手指に付着した細菌を減らすには抗微生物製剤が最も有効であったが,速乾性アルコール製剤は効果が一定でなく,効果が少ないこともあり,複数回の手洗い後には効果が減弱した。一部のウイルスは消毒剤に比較的強いため,せっけんと流水による物理的除去が最も有効であった。

抗菌手洗い用製剤も高い効果
せっけんで手を洗った際に除去され排水口で検出されたウイルスには,かぜのほかにA型肝炎や急性胃腸炎など多くの感染症の原因となるウイルスもあった。また,速乾性擦式製剤の細菌除去率が約50%にとどまったのは,もう 1 つの重要所見であった。

共同研究者で同大学内科のWilliam A. Rutala教授は「医療関連感染による死亡者は年間 9 万人に達し,米国における死因の 5 位までに入っていることから,今回の知見は重要である。手洗い用製剤は医療関連感染の発生を減らすことが示されており,現在では,さまざまな有効成分を含有し,さまざまな使用法の各種手洗い用製剤が販売されている。われわれの調査では,抗菌手洗い用製剤は,擦式アルコール製剤やふき取り式速乾性製剤に比べて細菌除去効果が有意に高かった。また,ふき取り式製剤以外のすべての製剤は,10秒という短時間の曝露で手指付着菌が90%減少した」と述べている。

比較的抵抗性の強いウイルスに注目すると,擦式アルコール製剤はほとんど有意な除去効果を示さなかった。同製剤は今後も重要な感染防御策であると思われるが, 1 日を通して従来のせっけんと流水による手洗いを推奨または強制することも重要であろう。

今回の研究はノースカロライナ州感染管理・疫学プログラムの助成を受けた。


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