第49回日本リウマチ学会
RAの経過と予後予測に関する研究報告
2005年5月19日号 Medical Tribune
抜粋・・・
〜関節予後の予測〜
抗CCP抗体,COMP,RFが有用
 骨関節機能を維持することはRAの治療目的の 1 つであり,早期に診断,炎症をコントロールすることで関節破壊は抑制される。国立病院機構相模原病院リウマチ科の松井利浩氏は,早期RAを対象に関節予後予測因子の同定を試み,「抗環状シトルリン化ペプチド(CCP)抗体,cartilage oligomeric matrix protein(COMP),リウマトイド因子(RF)は骨関節破壊の予後予測に有用である」と報告した。

炎症マーカーは疾患活動性評価に
 松井氏によると,近年,骨関節破壊の予後予測に関する研究成果の報告が相次いでいる。その背景には,予測因子の同定が,生物学的製剤使用の対象を選定するうえで重要な要素であることが考えられるが,個々の患者における予測はいまだ困難であるという。

骨関節予後の予測因子に関する報告のうち,RFを除く血清マーカーには,抗CCP抗体,マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-3,COMPなどが挙げられる。

同氏は,発症 2 年未満かつ非ステロイド抗炎症薬(NSAID)以外の治療を行っていない早期RA 42例(男性10例,女性32例,平均年齢54.8歳)を対象に,現在測定できるマーカーを用いてシャープスコアを指標に骨関節破壊の予後予測因子を検討した。その結果,抗CCP抗体およびRFで陽性群は陰性群に比べて 1 年目,2 年目ともに骨関節破壊が有意に進行し,COMPは 2 年目で同様に有意差が認められた。一方,MMP-3,C反応性蛋白質(CRP),赤血球沈降速度(ESR)では陽性群と陰性群との間に有意差は認められなかった。

次に,各パラメータの開始時陽性群を,抗体価が 1 年以内に低下した群(減少群)と低下しなかった群(上昇群)とに分けて比較したところ,抗CCP抗体のみ,上昇群は減少群に比べて 1 年目で骨関節破壊が有意に進行していた(図)。

同氏は「CRPやESRなどの炎症マーカーをその時点での疾患活動性の指標として用いながら,それ以外のマーカーで中長期的な骨関節破壊の予後を予測することが重要ではないか」と述べた。

〜動脈硬化の進展〜
炎症と骨粗鬆症が独立して関与
 RAでは,心血管障害による死亡率が健常者に比べて高いことが疫学的にわかっている。大阪市立大学代謝内分泌病態内科学の稲葉雅章助教授らは,RAでの動脈硬化の進展と,これに対する炎症と骨粗鬆症の関連を検討。「RAの炎症と傍関節性の海綿骨量の減少がともに動脈硬化性病変の独立した進行因子であることが確認された」と述べた。
3
悪性新生物発症頻度の概要が明らかに
 欧米を中心にRAと悪性新生物の関連についての研究が行われているが,わが国とは人種や生活習慣などが異なる。東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センターの山田徹氏らは,同センターで実施中の大規模臨床コホート調査J-ARAMISを用いてRA患者の悪性新生物発症頻度を検討し,男女別,部位別の罹患数,年齢調整罹患率(AIR)および標準罹患比(SIR)を報告した。

対象は2001年 4 月〜04年 4 月にJ-ARAMIS調査に参加したRA患者6,794例(男性1,227例,女性5,567例,平均年齢55.9歳,平均罹病期間8.0年)。

3.5年間のコホート調査の結果,男性17例21部位,女性62例63部位,計79例84部位の悪性新生物の罹患が認められた。このうち重複癌症例は 3 例,3 重複癌症例は 1 例であった。部位別では,胃癌が15例と最も多く,次いで,肺癌が12例,乳癌,子宮癌がそれぞれ10例であった。

AIRは,男性RA(281.1)は一般男性(381.7)より低く,女性RA(260.1)は一般女性(237.4)より高かった。部位別では,男性では胃癌が最も高く,次いで食道癌,結腸直腸癌の順,女性では同様に胃癌,次いで子宮癌,乳癌の順で高かった。

SIRは,RA男性では食道癌,悪性リンパ腫,咽頭癌,前立腺癌の順に高く,RA女性では,口腔・咽頭癌,皮膚癌,悪性リンパ腫,脳腫瘍で高かった。結腸直腸癌は男女ともに低かった。

同氏は「各悪性新生物のSIRは,95%信頼区間から見て現時点での信頼性は低い。これは観察数と観察期間が少ないためであると考えられ,さらなる追跡調査が必要である」と述べた。

また,メトトレキサート(MTX),非ステロイド抗炎症薬(NSAID)の使用歴や喫煙歴と,悪性新生物の罹患との関連は認められなかった。同氏は「薬剤の使用量,使用年数,調査以前の使用歴は解析されていないため,過去の薬剤使用歴を過小評価している可能性がある。喫煙歴についても喫煙本数,喫煙年数,禁煙期間などのデータは検討していなかったことから,今後はさらなる詳細な薬剤服用歴,喫煙歴情報の収集法を考慮する必要がある」と述べた。


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