米国胸部学会議(ATS2005)
COPDの病態および治療に関する最新情報
Care Net.comより まとめ 2005.6.1
●COPDの歴史
 COPD(肺気腫、慢性気管支炎)に関しては、1905年から数十年にわたる症状や病理像からの疾患概念の確立に始まり、その後の病因論の変遷から、最近の国際ガイドライン(GOLD)や日本呼吸器学会のガイドラインにも紹介されているように、病態として「炎症」が重視されるに至った過程について紹介された

●COPD患者の肺・気道の「炎症」機序の解明へ
 最近COPDの病態に関し、「炎症」が注目を集めています。2004年4月のN Engl J Med で、COPDにおける末梢気道炎症の重要性を指摘された。何らかの免疫反応がCOPDの発症機序に関与する可能性、特に末梢気道の炎症に関わる細胞群に関する検討がされている。上皮、マクロファージ、好中球の重要性に加え、B細胞を含めた免疫反応の機序が、COPD病態に関与している可能性。

肺容量減少手術(Lung Volume Reduction Surgery; LVRS)から得られた検体を使用して研究が行われている。今後のCOPD研究の発展に大きく寄与するだろう。

●長時間作用型抗コリン薬チオトロピウム 
 ※チオトロピウム 商品名:スピリーバ(ファイザー、べーリンガー)
 COPDの治療に関しては、最近登場した長時間作用型気管支拡張薬により、肺機能や息切れ(呼吸困難)が大きく改善し、治療に反応しない疾患ではない」

長時間作用型抗コリン薬チオトロピウムのように強力な作用が長時間持続する気管支拡張薬は、末梢気道の拡張により肺容量を減少させ、運動時の息切れを改善して患者の運動能力(運動時間)を増し、行動範囲を広げる。

こうした効果は長期間投与、長期間(1ヵ月、さらには半年、1年と使用し続ける)続けることによって効果が増大する。チオトロピウムの長期投与はCOPD患者の息切れによる行動低下を介したdeconditioningを、活動性を増すことで絶ち、患者の症状改善をもたらすと思われる。

薬剤の投与前にその効果、特に長期効果を予測可能か。チオトロピウム初回投与時のFEV1改善程度と、その後の急性増悪の抑制効果の関係を検討された。この報告では、初回投与後のFEV1 の改善が15%未満であったless-responderでも急性増悪の減少は認められること、しかし15%以上のgood-responderの方で減少効果がより高い。この結果から、チオトロピウムの長期的な効果は初回投与時の呼吸機能の改善程度に関係するが、初回反応が小さくとも長期効果は充分ある。

●LABA(長時間作用型のβ2刺激薬)など他剤との併用効果
 ※サルメテロール 商品名 セレベント(グラクソ・スミスクライン)
 ※サルメテロールとフルチカゾンの合剤 商品名 セレタイドR(グラクソ・スミスクライン)
 長時間作用型抗コリン薬に、やはり長時間作用型のβ2刺激薬(LABA)を組み合わせた場合の上乗せ効果。チオトロピウムは単独投与で優れた効果を示すが、サルメテロールとの併用によりFEV1でさらに150cc〜200ccの上乗せ効果が得られる。この結果から運動能改善が大きくなると思われ、実地臨床におけるステージ3〜4の重症COPD患者に対して薬剤併用を行う根拠となる。

プライマリケアでCOPDと診断された患者の治療背景としてLABA単独、吸入ステロイド薬単独、LABA+吸入ステロイドの3群でチオトロピウムの効果を検討され、いずれの群でも有効であったという報告がされた。これはCOPD治療におけるチオトロピウムの有用性を示すもので、わが国の臨床現場でも充分参考になる。

●薬物療法の今後の課題
 チオトロピウムのCOPD患者に対する症状改善効果は明らかで、今後は疾患の進行にも有効か否かという点が重要な検討課題である。

COPDの病態において重要とされる「炎症」の改善効果、加えて閉塞性障害の進行抑制作用があるかどうか。


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