「治験のあり方に関する検討会」の発足に環境整備の進展を期待する
大阪府医ニュース 2005.5.25
 厚生労働告は3月29日、治験を円滑に実施するために必要な環境整備および治験実施にかかる関係者の負担軽減などを検討する目的で「治験のあり方に関する検討会」を発足させた。平成9年に新GCP (good clinical practice/医薬品の臨床試験の実施基準)が施行され、治験が煩雑になり停滞したと言われていることや、15年7月の薬事法改正により、臨床の現場では必要性が高いものの企業が採算面から手を付けない薬剤の供給を促進するために制度化された医師主導型の治験が進捗していないことから、同検討会が設置されたものである。

 新GCPにより治験が煩雑化したことについては、3月17日の大阪府医師会治験セミナーにおいて、複数の治験実施医師が「新GCP下に行われる治験でも、治験施設支援機関(SMO)と契約して治験コーディネーター(CRC)の協力を得るなどの治験環境を整えれば、医師の負担は以前と比べ変わらないか、むしろ軽くなる」と述べているように、治験環境を整えることで医師に対する負担を減らすことは可能である。

一方、医師主導型の治験には補償問題や特定療養費対象外の費用、有害事象の情報処理など、様々な実務上の問題点が残っている。4月から、治験にかかる検査や画像診断の保険適用化、治験薬剤の料金について被験者に特定療養費として負担を求めることができるようになったが、まだ不十分である。特に、有害事象の情報は世界中から集まるため莫大な量になり、その処理を小規模医療機関で行うのは不可能に近い。

日本医師会治験促進センターが行っている大規模治験ネットワークによる治験では、有害事象に関する情報処理を個々の医療機関に代わって同センターが行っているが、多くの候補薬剤の治験が同時進行することになれば、同センターであっても処理の限界を超えると思われる。

 医師主導型の治験を企業主導型のそれと同レベルで行い進捗させていくためには、更なる環境整備が必要である。「治験のあり方に関する検討会」の今後の活動に期待したい。


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