78%に労働法規違反」
 〜医療保健業、04年監督業務実施状況〜
メディファクス記事 2005.5.30より
  厚生労働省労働基準局は27日までに、2004年の「監督業務実施状況」をまとめた。医療機関を含む「医療保健業」では、時間外労働を可能にする労使間の「三六協定」がないまま残業をさせるなど、定期監督を実施した2204件のうち1725件(78.3%)が、労働法規上の違反をしていたことが分かった。労働基準監督署が未払い分の賃金を支払うよう求めても拒み続けた事例など、送検された事業場も5件あった。

 医療保健業には、病院、診療所、歯科診療所のほか、助産所などが含まれている。定期監督は、新たに開設した事業場や、過去に違反していた事業場、違反の情報提供を受けた事業場などが主な対象。ただ、就業規則を変更したのに労働基準監督署に提出し忘れていたなど、実害があまりないような事例でも法違反にカウントされたり、告発を受けて事業場に監督に入るため、違反している割合が高くなる傾向にある。労働基準局では、違反件数の多さがその業界の全体傾向を表すことにはならないとしている。

 医療保健業の違反は、労働基準法関連では、午後10時までの通常の残業代や午後10時以降の深夜残業代といった残業代の名目が分類されていないなど「割増賃金」の関係で691件、作成と労働基準監督署への届け出が必要な「就業規則」の関係が707件と多い。

 労働安全衛生法については、「健康診断」で269事業場が違反していた。
一部の職員に健康診断を行っていなかったケースなどがある。ほかにも、事業場内での「衛生管理者」の関係で187事業場、「安全衛生委員会」の設置関係で202件の違反があった。

 また、不当な労働環境に対する労働基準監督署への投書などによる「申告処理状況」を見ると、医療保健業で処理が必要だった事業場数は901件。申告された内容では、「賃金不払」が542件で最多。次いで「解雇」が231件で続いた。労働基準局によると、退職時のトラブルによる感情的なしこりから、賃金不払いが発生するケースなどがあるという。

 介護事業所などを含む「社会福祉施設」は、2735件中2109件で法違反があった。就業規則836件、労働時間991件、割増賃金931件、健康診断394件などが多い。全業種を見ても、これらの項目に違反が多く、医療・福祉業に限ったことではない。
三六協定とは http://www.zeseikankoku.com/kisoku/kyouteikiso002.htmlより抜粋
 労使協定のうち、時間外労働・休日労働に関する協定届で、法36条が根拠であることから「三六協定」と呼ばれる。

 労働基準法では、「労働者に、休憩時間を除き一週間について週40時間を超えて、労働させてはならない。」とし、「一週間の各日については、休憩時間を除き一日について8時間を超えて、労働させてはならない」としています。

@災害その他避けることのできない事由(行政官庁の許可が必要)
A公務のため
B三六協定を締結・届出
の場合を除き、使用者は一日8時間を超えて労働させることはできない。
 
 上記@〜Bに該当する場合は法定労働時間を超えて労働させることができる。三六協定を届出して労働時間を延長し、又は法定休日に労働をさせることがでる。

 ただ三六協定の締結は、時間外労働・休日労働を無制限に認めるものではなく、本来臨時的なものとして必要最小限にとどめられるべき。締結すべき事項については
@時間外または休日労働を必要とする具体的事由
A業務の種類
B労働者の数
C1日及び1日を超える一定期間について延長することのできる時間または労働させることができる休日
D協定の有効期間 

 三六協定の効力は、三六協定があるというだけでは時間外・休日労働の義務が生じるわけではなく、就業規則に「時間外・休日労働を命ずることがある」旨の規定があり、かつその都度命ぜられる必要がある。また一定期間の延長時間の限度について協定をした場合に、これに反して時間外労働をさせれば、法律違反となる。

業務上必要がある場合でも、三六協定で定めた限度を超えて労働時間を延長してはならない。もし延長時間の限度を超えて労働させた場合は、法違反となるが、法違反であるからといって、割増賃金の支払い義務を免れることはできない

<法令用語の解釈>
 労働基準法でいう「労働時間」とは、一般的に、使用者の指揮監督のもとにある時間をいい、現実に精神又は肉体を活動させているかどうかは直接関係なく、いわゆる「手待時間(例えば、電話番として一人会社に残る)」を含みます。簡単に言えば始業時刻から終業時刻までの、いわゆる拘束時間から休憩時間を除いた時間が労働時間であり、法は、この労働時間について、一週間と一日の両面から規制を行っている。
 
 「一週間」については、就業規則などで、「月曜日から日曜日まで」というように、具体的に定めている場合以外は「日曜日から土曜日まで」とする。
 
 「一日」については、原則として午前零時から午後12時までの一暦日を意味します。しかし、16時間隔日勤務などのような継続勤務は、たとえ暦日を異にする場合でも、一勤務として取り扱うべきものとされ、二暦日にわたる一勤務については、全体が始業時刻の属する日の労働として取り扱う。

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