患者の権利と医療の質の向上を目指して
「どうする日本の医療」第2回
李 啓充 医師・作家(前ハーバード大医学部助教授)
日医ニュース 2005.6.5
・・・略
 近ごろ日本で、手術成績や、独自に点数をつけるなどして病院を選ぼうとする動きがあるが、急に重篤な状態に陥って救急車に乗せられた患者さんに、そのような点数を調べて病院を選ぶ時間的余裕はない

今、一番必要なのは、社会全体の医療の水準を同等に上げる努力をすることである。救急車でどこの病院に連れていかれても、安心して手術を受けることができるという医療制度を確立しなければならない。

 医療倫理の四原則は、
@患者の自律性を尊重する
A患者に害をなさない
B患者の利益を追求する
C正義・公正に基づいた医療を行う
である(表A)。

 実は、医療におけるパブリックポリシー(公共政策)というものは、この四原則にのっとった医療を実現させるための制度をつくることを目標とするべきなのだが、なぜか日本では、残念なことに、コスト抑制やビジネスチャンスの創出といった、まったく関係のないところで議論が行われている。

 日本の医療保険制度改革の議論は、市場原理の側面からではなく、患者の権利と医療の質の向上という観点から始めるべきであると思う。
表A 理想とする21世紀の医療のあり方
医療倫理の4原則
(1)Respect for Autonomy(患者の自律性の尊重)
(2)NonmaIeficence(患者に害をなさない)
(3)Beneficence(患者の利益の追求)
(4)Justice(正義・公正)

医療の公共政策もこの4原則の実現を図るものでなければならない
・患者の権利保障(法制化)
・医療の質の向上(医療過誤対策も含まれる)
   医療の質を向上させるための直接の施策が必要
   診療報酬支払い方式の変更で質の改善は達成されない
・公正な医療資源の配分
   医療を市場原理に委ねることの危機公正な配分を破壊
   コスト削減からコスト効率改善への発想の転換

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