質の向上、維持には
北摂総合病院副院長
(医療安全管理担当)    小林一朗
大阪府医ニュース 2005.6.8
 平成16年1月に安全管理部門の責任者に就任してから、他施設のリスク(セーフティー) マネジャーの万達と接する機会が幾度かあり、同様の悩みを持つことを知った。

 日々報告されるヒヤリ・ハットや事故のレポートから、防止策を考案して院内に周知徹底を図り実行する。この周知徹底が極めて困難なのである。中小病院のほとんどで、リスクマネジャー達は兼任である。彼らにとって最も消耗することは、苦労して対策を講じても、なかなか守られず徹底されないことにある。リスクマネジメントにかかわらず、質の改善活動はボトムアップと言いながら、実際は献身的な特定の人達によって支えられている面が大きい。

 病院にとって必要なことは、改善活動のコアになる職員のモチベーションを維持することであり、そのためには全職員にルールの順守を強く求め、公平な評価を行う組織、風土作りが求められる。

一方、安全管理体制の義務が法的に定められたが、診療報酬上は未整備による減算というマイナス評価である。質の向上は法律の義務付けや、医療機関や医療従事者の高い志だけで行われるのではなく、経済的インセンティブがあって然るべきである。

 日本医療機能評価機構の病院評価機構については、法的な義務はないが、最近では受審病院が急増している。これにより院内での意識の統一を図りやすく、その過程で著しく改善効果が得られることは経験から実感しているものの、いわば最高到達点での評価である。認定後は、受審以前に逆戻りという話も聞こえなくもない。受審の準備にはそれなりの費用がかかるが、受審後も質を維持し向上させる費用は大きいのである。


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