カプセル内視鏡検査で分かったこと
日医ニュース2005.8.5『新しい医学の進歩』カプセル内視鏡より
日本消化器内視鏡学会理事長、聖マリアンナ医科大学客員教授 丹羽寛文(日本消化器内視鏡学会)
 新しい内視鏡としてカプセル内視鏡が登場した。カプセル内視鏡本体は、噺下可能なカプセル状のもので、体壁に貼付したセンサーアレイからの画像信号をデータレコーダーに保存し、画像解析装置を通じて、テレビモニター上に画像を得て診断する。
内蔵した電池で約八時間の検査が可能で、照明には白色LED(発光ダイオード)が使われ、一秒間に二回発光し、一検査当たり約五万枚の内視鏡像が撮影できる。受光素子には、十九万画素のCMOSが使われ、内視鏡本体は便と共に排出され使い捨てされる。モニター画面では動画として観察するが、早送り再生が可能で、異常が疑われた所で静止画として観察できる。また、出血が疑われる部位をコンピューターで解析し表示する機能もあって、カプセル本体の概略の腰管内位置も表示できる。
 現在、海外で使われているのはイスラエル製のカプセル内視鏡であるが、すでに国内メーカーも試作に着手している。

 カプセル内視鏡検査は日本ではまだ承認されていないが、欧米では2001年に、原因不明の消化管出血に対する補助的診断法として認可され、2003年8月にはアメリカFDAで小腸疾患診断の第一選択として承認され、その後、急速に世界中に広まり、2004年末までに、すでに十数万例を超える経験例があり、小腸疾患、特に小腸出血の診断に有用なことが確認されている。また、食道用に両方向が観察可能なカプセル内視鏡も開発され、逆流性食道炎、パレット食道などの検査も可能になってきた。

 その一方、カプセル内視鏡本体が腸管内で停留し、排出不能となった症例も報告され、クローン病が疑われる症例では注意を要する。

 あらかじめ狭窄の有無を知るために、]線で証明可能な、腸管内で停滞すると一部を除いて溶解するpatency capsuleを飲ませて検査する方法も開発されている。これによって停留が起こらないことを確認したうえで実施するならば、クローン病にも使えることとなった。

 カプセル内視鏡で分かったことは、予想以上に小腸腫瘍が多いこと、またNSAiDs(非ステロイド性抗炎症薬)での小腸潰瘍の発生がかなり多いことである。従来、小腸には病変はほとんどないと思われていたのは、検査方法がなかったためで、その存在が知られていなかっただけのことのようである。いずれにしても、本検査が本領を発揮するのは、J明らかな消化管出血を認めるものの上部消化管内視鏡検査、あるいは大腰内視鏡検査で異常所見を認めない例での消化管出血の原因解明にあるものと思われる。

 しかし、小腸には有用であるものの、現状では胃、大腸に関しては全く無力であって、胃、大腸の検査が可能なカプセル内視鏡の開発が今後の課題である。


もとに戻る