ペストワクチンに免疫増強薬を結合、バイオテロに備えて研究中
Medical Tribune 2005.6.16
〔シカゴ〕ウェイクフォレスト大学(ノースカロライナ州ウインストンセーラム)徴生物学・免疫学のStevenB.Mizel教授は「免疫増強薬としてフラジェリン(細菌のべん毛に含まれる蛋白質)を併用するペストワクチンをペスト菌抗原と組み合わせると防御効果が得られる」と,米国消化器病協会(AGA)年次集会で報告した。

 肺ペストにも有効
「黒死病」とも呼ばれるペストは,欧州では中世期に人口の大半を犠牲にした。現代はバイオテロに使われるのではないかと恐れられているが,ついに好敵手が発見された。

 Mizel教授によると,フラジェリンを結合させたワクチンは,この疾患で最も脅威的である肺ペストに対して免疫のあるマウスや霊長類のいずれにおいても効果的である。ペストで最も危険な種類は肺ペストで,治療しなければ3〜4日で死亡する。

 サルの場合,ワクチンは効果的だったうえにワクチンに伴う副反応も見られなかった。また,免疫されたマウスは生き残ったが,対照マウスは3日以内に死亡した。

 予防効果はワクチン接種後3か月以上継続した。また,免疫増強薬をワクチンに加えると,ペスト菌に対する抗体レベルは,同菌から得られた蛋白質だけを注射した場合に比べて50万倍にも上昇した。

 同教授は,事前のフラジェリンへの免疫は免疫増強薬として作用するフランジェリンの機能を妨げるものではないことに注意を促した。これにより,フラジェリンに対する抗体を持つ動物でも抗体を持たない動物と同様に免疫増強薬として効果的であるとしている。

 同教授は「このことは,フラジェリンがさまざまな種類のワクチンに対して使えることを意味している。

新しいペストワクチンは数滴点鼻するだけで効果があるので,注射の必要がないことも利点である」と述べた。

 同教授らは,次のステップとして,ワクチンの有効性を確かめるためサルを対象に研究を進めてからヒトでも検討する予定だという。

 この研究は,米国立衛生研究所(NIH)が助成した5年計画で予算910万ドルのバイオテロリズム行動計画研究プログラムの一部である。このプログラムには,ほかに同大学医学部の6人の研究者と米疾病管理センター(CDC)により危険な病原体の研究を許可されたバージニア工科大学(バージナ州ブラックスパーグ)のバイオ安全管理研究所が参加している。


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