小児救急 模索する現場 D 2005.12.28 読売新聞 朝刊
 「小児科、産科などは引き上げる。0.3%以上、225億円だ。政治の意思としてきちんとやる」一医療機関に支払われる診療報酬の引き下げが決まった18日の記者会見で、川崎厚生労働相はこう語った。
全体で3.16%と過去最大のマイナス改定の中、特定分野の増額幅に言及するの
は異例だ。
 小児科を持つ全国の病院は、この10年で700以上減った。その一因は「不採算」だ。子供の治療は、大入に比べて医師や看護師の人手がかかる一方、症状が軽い場合が多く、検査や薬の量も少ない。厚労省研究班の調査では『収支が算出された病院のうち約40%で小児科は赤字』だった。

 小児救急の充実のため、夜間・休日に6歳未満の子供を診療した際の診療報酬を上乗せする「乳幼児加算」が、2000年と04年の改定で計500円引き上げられた。だが、夜間に診療する病院は増えず、「この程度の改定では病院の小児科の経営難は救えない」と日本小児科学会の安田正理事は言う。「診療にかかる人手や時間を考慮し、同じ医療行為でも小児は成人より手厚くする新たな診療報酬体系を作るべきだ」と提案する。

 救急体制整備に財政的な支援は必要だが、それだけでは問題は解決しない。
 カナダのブリティッシュ・コロンビア州。日本の2.5倍の面積に、東京都の人口の3分の1にあたる人が住むが、病院の数は東京の10分の1に満たない。

 同州で唯一の小児病院の土ランジャン・キスーン副急病になると、親は「家庭医」と呼ばれるかかりつけの開業医に電話し、助言を仰ぐ。軽症なら、これで解決することも多い。 治療が必要なら、近くの救急病院へ向かい、救急医が対応する。さらに小児科医による専門的な治療が必要な時は、小児病院に電話で連絡、遠距離ならヘリコプターで搬送する。

 日本のように、消防署の救急隊が病院探しに苦労することはなく、まして「病院が重症児の受け入れを断ることは絶対にない」(キズーン副院長)。
小児病院が核となり救急医や開業医が連携することによって、病院が少ない広大な土地でも小児救急医療が機能している。

 日本小児科学会は、地域の病院の小児科医を拠点病院に集める「地域示児科センター」構想を進める。だが、小児科医が足りない地域も多く、内科医、外科医も広く参加することが求められる。

看護師の活用も重要だ。国立成育医療センター(東京)では、、緊急性の高い子供を迅速に治療するため、まず専門の看護師が患者の緊急度を判定する。

 夜間に急病になった時、カナダで家庭医が電話でアドバイスを与えるように、国内でも医師や看護師が電話相談に応じる事業を始めた自治体もある。

 小児救急は、地蔵全体で作り上げる医療。医師らと患者、行政が協力し、実効性のある体制を築く時だ。
      (おわり)
(この連載は医療情報部・山口博弥、社会保障部・飴木教秋、さいたま支局・川嶋三恵子が担当しました).
※カナダでの税金制度はどうなっているのか、おそらくこれくらいのことをやるのなら相当の費用がかかるはず・・

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