危機管理で新国際規格 ISO、2008年夏までに
2005.12.28 日経新聞 夕刊
 国際標準化機構(ISO)は、企業や自治体などの危機管理体制が整っているかどうかを認証する新しい国際規格をつくる。各国政府が中心となって年明けから検討を開始。2008年夏までに導入する。災害や事故への備えを促し、社会的な損失を最小限に食い止める。今年は東京証券取引所のシステム障害やJR西日本の鉄道事故など大きなトラブルや事故が相次いだ。国際規格で企業などは一段と危機対応の強化を迫られる。

 ISOは日米欧の主要国政府と連絡を取り、2008年夏までに新規格をつくる方針を決定。まず各国が年明けから検討を始める。ISOは来年四月に委員会を立ち上げ、各国がつくった規格案を持ち寄り調整を始める。一年程度かけて具体案を決める。日本は経済産業省を中心に案をつくる。

 規格の対象は地震をはじめとする天災、テロ、システム障害、事故など様々な危機に直面した際の組織としての対応。企業のほか自治体や学校なども対象とする。評価項目などは今後詰める。

 システム対応が万全かどうかは評価基準の大きな柱となる。例えば企業の基幹システムでは@必要最小限のシステムを作動し続けられるかA時間軸に沿って復旧させる体制になっているかB従業員を訓練しているかC非常事態での命令系統を定めているかーーなどがポイントになる見通し。

 政府や自治体など公的組織の対応では、災害時に被害を最小限に抑え、住民を保護する体制を整えているかが重要な評価基準となる見通し。地元企業が復旧を支援する準備を整えているかもポイントとなる。

 ISO規格は企業などにとって取得の義務は課せられず、法的拘束力もない。しかし、環境や品質管理ISOの取得は、生産工程や製品の優良さを客観的に評価する格付けとして企業のイメージを左右する。欧米では取得を取引条件とする企業も多い。このため認証取得熱は高まっている。

 ただ認証審査では企業に様々な情報開示を求めるため、企業秘密などを理由に慎重な企業もある。特に危機管理システムは社外に公表したくないとする企業も多い。世界の主要企業から強い反発が出た場合は、新親格適合の是非を企業が自主的に宣言することを認めるかどうかも検討する。

 災害やトラブルによる事業の停止は企業自体だけではなく、取引先や利用者にとっても大きなリスク。今年は金融分野のシステム障害や交通機能のマヒが相次ぎ、危機管理への関心が高まっている。新規格の取得は取引先の選別や社会的信用の面で大きな影響を与えるとみられ、企業や自治体は新たな対応を迫られる可能性が大きい。
▼国際標準化機構(ISO)
 1947年設立の非政府国際機関lnternational Organization for Standardizatioの略。本部はスイス・ジュネーブ。電気.・電子分野を除く全産業分野の国際規格を定める。

電気・電子は国際電気標準会議(IEC)が担当。加盟国数は約150。日本は1952年から参加している。もとは工業製品の寸法や形など仕様を定めていたが、最近は環境や品質管理の規格をつくっている。規格づくりには各国の標準化機関が参加しているが、重要なテーマでは各国政府が窓口となり、調整している。
※)マスコミをにぎあわせているある建築企業も認証されていたとのこと、認証機関がしっかりしてないと何にもならないのでは?

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