ピロリ陽性だと予後良好?胃癌の術後生存期間で大差
Nikkei Medical 2006.4
 ヘリコバクタ一・ピロリ菌に感染している胃癌患者の方が、感染していない胃癌患者よりも、術後の生存期間が長くなるという興味深い研究結果が、Lancet Oncology誌3月号に掲載された。(Meimarakis G et al Lancet Oncol.2006;7:211-22)

 ドイツで行われたこの研究では、1992年から2002年にかけて胃腺ガンの治癒切除術を受けた166人(平均年齢65歳)の予後を、中央値で53カ月(1〜146カ月)追跡し、生存期間とピロリ菌感染との関係を検討した。

 ピロリ菌感染の有無は、患者からの聞き取りと手術直後の標本採取に基づいて評価した。陽性者は125人、陰性者は41人で、陽性者の方が女性の頻度が高く、胃炎の活動性と重症度も有意に高かった。

 術後の無再発生存期間は、ピロリ菌陽性者は56.7カ月であるのに対し、陰性者は19.2カ月と有意に短かった。全生存期間も、陽性者の61、9カ月に対し、陰性者は19.2カ月と短く、その差は約3年半も開いた。カプランマイヤー法による予測曲線でも、陽性者の全生存率の方が良好だった。

 多変量解析の結果、「ピロリ菌陰性」は、「腫瘍の浸潤の深さ」「リンパ節転移」「67.5歳以上」と並んで、生存期間不良の独立した予複予測因子となった(無再発生存期間、全生存期間に対するハザード比はそれぞれ2.16(2.00)。

 切除後の腫瘍組織の病理学的検討から、ピロリ菌陽性者の腫瘍組織には、抗原特異的な免疫反応を抑制する「OX40発現T細胞」の数が有意に少ないことも分かった。このことから、著者らは「ピロリ菌陽性者の方が、T細胞の腫瘍に対する免疫反応が高いのではないか」との可能性を指摘している。

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