勤務医師・残酷時代、女性医師の明るい未来を模索して
大阪市立十三市民病院副院長 揖場和子
大阪府医ニュース『勤務医の窓』より  2006.4.5
 年度末を迎え、開業などを予定した医師の退職が増加傾向にある。そのため、病院に残った数少ない勤務医師への負担が増える。医療安全上の不安から、精神的・肉体的に消耗して燃え尽きることを恐れながらの診療の日々が、更に退職を誘うという悪循環である。世はまさに、病院勤務医師の地獄の時代となってきた。その中で女性医師が連携で明るい未来を模索している。

 昨年、大阪市勤務医師会は、その学術集会で女性医師の働く環境をテーマに「女性医師の現在と豊かな未来のために」という特別シンポジウムを開催した。椿尾百合子・同会女性医師の会会長の司会で、大阪府医師会の中川やよい理事、大阪市立大学医学部医師会の上田貢喜子教授が講演され、また、NPO法人の立場から瀧野敏子医師が「女性医師は出産、育児の時期を無事に越えると60歳まで活躍し、社会的に貢献している」と発表された。

 しかし、出産、育児の一時期での病院勤務は女性医師にとって過重労働となり、周囲との確執と配慮から退職する傾向にある。女性ならばこその大事な時期に、何らかの援助が必要であると女性医師達は自覚している。増える女性医学生、女性研修医、女性研究医の存在は相対的に男性医師の占める割合が減少することになる。昨年末には初めて日本人の人口が減少したと新聞をにぎわせた。

 女性が勤務を継続できる環境をつくることは、女性医師の出産をサポートすることとなろう。政策的に開始された女性外来は、まず女性医師の存在が必要であるが、その質の向上も期待されている。

女性医師の資質に必要なキャリアを研鑽し、女性医師としての公私の生活の充実に、どんなサポートが効果的なのか模索している。

 その取り組みのひとつとして、大阪市立医療機関の市立大学と市民病院が、女性医師を中心にした初の合同総会を、3月11日に市大医学部講堂で開催した。ネットワークづくりを基に、男性医師とともに病院勤務医師の残酷時代を乗り切ろうとしている。


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