生殖能力のある日本人男性の精子数
日医雑誌135(2):329-335,2006
・・・略 
おわりに
  生殖能力のある日本人男性(川崎・横浜地区) の精子数は,精子濃度が125×106/ml,総精子数 が380×106と高い値であった.しかしヨ一ロツパ4都市と比較するために交絡因子(禁欲期間)の影響を調整した値で比較したところ,川崎・横浜の男性の精子濃度は(総精子数,精子連動率,正常形態率も同様に)ヨーロッパ4都市のどこの男性よりも低いことが判明した。

 日本人男性の生殖機能のパターンは精子数についてはデンマークに近く,精巣腫瘍等の発生率に関してはフィンランドに近かった。

 アジアやアフリカの男性が白人男性よりも生殖機能を示す指標の数値が低いという報告と併せて,遺伝的因子や生活因子等の違いによる日本の特殊性を考慮に入れると,日本人男性の精子数がデンマーク人と同程度であったとしても,それは日本人にとって必ずしも生殖機能の低下を意味する数値とはいえない

また,見かけの精子数を増加させる要因となる禁欲期間の長さも,配偶者が妊娠中の日本人男性に特徴的な生活因子の1つとしてとらえるべきなのかもしれない.
※精液量、精子濃度は禁欲期間が長くなるにつれ増えることは古くから知られている。ヨーロッパの男性では4日くらいまでがピークでそれ以後は変化はないが、日本人男性では9日くらいがピークになっている。

 われわれは今回の経験で,よくデザインされた方法(調査対象集団の選択,精液検査法の標準化,精液検査法の精度管理,適正な解析方法の応用等)によって疫学調査を実施することの重要性を痛感した.男性生殖機能については,環境因子との関連のみを単独でみるのではなく,遺伝的素因や生活因子の影響と共に検討していくことが今後の課題として重要であることを改めて認識することができた。
※日本人男性の集団研究でY染色体の多型で精巣機能(精子形成能)が異なる可能性があるという報告

 しかしながら,これら2つの影響を検討するに足る十分な資料,すなわち,日本を含めたアジア諸国の男性生殖機能に関する報告はまだ非常に少ない.今後は,気候,風土,生活習慣,人種などの異なるこれらの地域での状況について情報を収集し,統一化された方法による疫学調査を継続的に実施することによって,遺伝的素因,環境因子の両面から男性生殖機能の現状と動向について検討を続けていきたい。
私見)
いろんな研究があるものですね・・・。詳しくは雑誌をご覧ください。


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