カルテ改ざんは犯罪行為
2006.10.4 府医ニュース 『勤務医の窓』より
 「論より証拠 カルテの一行 身を助け」
 これは安田正幸・前大阪府医師会理事が発行された「医事紛争防止・いろはカルタ(作‥大域孟氏ほか)」 の一文である。カルテは日常の診療行為の都度、記載しなければならないと法律に規定されている。カルテの改ざん(偽造・変造・虚偽記載)は犯罪行為であることを、肝に銘じて診療にあたらなければならない。

一方、医療過誤訴訟等において、カルテの記載不備が問題となり裁判所や患者側代理人から厳しく指摘される事例も散見される。すなわち、カルテの所見欄への記載が不十分であったり、診療事実の記載が乏しく把握困難であったりする例や、患者側から医療ミスを指摘されてからカルテに加筆した例などである。どんなに忙しくても、臨床所見や患者への説明内容は、診療の都度、忠実にカルテへ記載すべきであり、それが安全・安心医療に直結し、我々自身の身を守ることにつながる。 

平成16年1月20日の甲府地裁判決では、担当医師の医療行為に過失はなかったと判断されたものの、その後にカルテの改ざん、偽証および偽証教唆が発覚し刑事告発がなされ、担当医師は懲役1年6カ月の有罪判決を受けた。更に、訴訟上で真実を隠し続けたとして悪質な不法行為が認定され、民事訴訟でも1700万円の賠償命令が下された。

 最近では、新医師臨床研修制度導入後の指導医の監督・指導不十分による研修医の事故も危惧されるところである。指導医が若い医師達に、診療行為の都度、カルテを記載するという基本的事項を徹底するとともに、その改ざんは犯罪行為であると伝えることを望む。


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