秋の花粉症
アレルギーの常識・非常識より infoAllergy 2006.Oct
秋の空中花粉
キク科のブタクサ属花粉とヨモギ花粉は強い抗原性を示し花粉症の原因。
クワ科のカナムグラ花粉も秋に飛散し抗原性も強いが、患者は少ない。
草本花粉は木本花粉よりも抗原性が強いが、飛散花粉絶対数は少ないので患者数も少ない。
秋にもイネ科花粉の飛散はあるが、抗原性が乏しい。
初夏から秋の空中花粉は草本花粉が多く(grass season)、スギ、ヒノキなど木本花粉が多い(tree season)。
例外として、マツ科のヒマラヤスギとニレ科のアキニレの花粉は秋にも多く飛散するが、抗原性は乏しい。
少数だが秋にスギ花粉が観察される。
スギの森林面積は膨大で休眠せず花粉を飛散し、一部の花粉症患者が発症する。
宅地開発や道路整備、都市河川の堤防整備、ゴルフ場の除草剤使用などでキク科の花粉抗原の飛散量は減少傾
向にあるが、人口の密集する南関東では秋の花粉抗原は圧倒的に飛散量が多く、花粉症としての重症である。
 
花粉飛散の地域差
秋の草本花粉への関心は相対的に薄れているが、韓国を含めて日本以外の国では花粉症といえば秋の疾患。
草本花粉は飛散は数km以内、局所的に発症。
スギ花粉は高度100mを100km以上飛散。

○ブタクサ花粉(北米の代表的な花粉抗原)は欧州でも増加傾向。河川敷や空き地、道ばたに生え、飛散量に地域差。飛散量は南関東では増加傾向、他の地方では減少傾向、中四国や九州の飛散量は特に少ない。人口当たりの患者数も南開東に多い。
南関東の観測点である神奈川県相模原市は、人口急増地域で広大な空き地が大半を占め、北米とは検疫を経ない航空機の往来がある米軍基地から進入した可能性。

ヨモギ花粉症は南関東に飛散量が多く、東北・甲信越がそれに次ぎ、西日本では少ない。

地域的な秋の花粉症としては、北海道のオオバコ花粉症、長崎・熊本ではカラムシ(イラクサ科)花粉症など。

○イネ科花粉症
国内でもっとも重要な草本花粉症は、初夏のカモガヤやオオアワガエリなどのイネ科花粉症。関西の淀川の河川敷にイネ科雑草が群生繁茂している。この周辺ではスギ・ヒノキ花粉症以上にイネ科花粉症患者が多い。

春から初夏に花粉を飛散するイネ科雑草の多くは牧草として北米から帰化した植物で、ギョウギシバ、ネズミムギ、スズメノテッポウなどがあり、花粉1個あたりの抗原性は草本花粉の中でも強い。

食用のイネの花粉は抗原性がない。他のイネ科雑草の花粉も抗原性は乏しい。

○ブタクサ花粉症
 ブタクサは北米原産のキク科の一年草であり、8月から9月に開花。ブタクサは高さ40cm〜1mで、花は黄色。共通抗原性をもつオオブタクサはヒトの背丈より高くなる。都心でも空き地、道ばたにみられるが、群生地は河川敷。

南開東、特に相模原で観測される捕捉花粉数は、他の地域に比べ桁違いに多い。
熊本でも増加傾向。
人口当たりのブタクサ花粉症患者数も関東地方では増加し、他の地方では減少。
ブタクサ属花粉症は国内では関東地方の風土病ともいえる。

○ヨモギ花粉症
多年性のキク科雑草。
日本全国の日当たりのよい平地や丘陵地に群落自生し、近年ではブタクサよりも優勢に繁殖。
東北以南では8月中旬から10月中旬に開花。ブタクサ花粉より約1ケ月遅い
全国的には南開東と関東甲信越で花粉飛散が多い。
キク科花粉は共通抗原性あり、ヨモギ花粉症患者の90%以上はブタクサ花粉抗原にも交差反応。
観賞用のキクも栽培農家では花粉症の原因となる。
アキノキリンソウはキク科雑草であるが、抗原性が弱く花粉抗原としては重視されていない。

○秋期スギ花粉症
スギ花粉の飛散期は1月下旬から4月。しかし、暖冬年では10月から12月にもスギ花粉が観測され、この時期に過敏症を発症するスギ単独感作患者もいる。
スギは夏期の雄花芽が形成され、秋期に成熟花粉に分化しcry j 1を花粉内に産生する。12月に気温が10℃以下になると、休眠期に入り、40〜50日程度で休眠から目覚め、1月末から花粉飛散が始まる。
休眠に入れば、休眠打破、発育、花米飛散のプロセスは年始からの気象頚件にかかわらず進むのではないかという意見があり、花粉飛散開始日の予想には晩秋の気温低下の時期が重要。
秋の気温が高いと休眠期を経ずcri j 1を有する花粉を飛散する可能性。
温暖化が進むと年中スギ花粉が飛散することになるかもしれない。

その他の秋のアレルギー性鼻炎
 クワ科のカナムグラ花粉も、南関東、東海、九州では秋に飛散が観察され抗原性も強いが、なぜかカナムグラ花粉症を発症している患者は少ない。花粉以外の秋の抗原としては、ゴキブリやユスリカやガなどの昆虫、イヌやネコなどの動物、真菌も考えられる。

  
 


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