皮膚レーザー治療の進歩
(日本形成外科学会常務理事・徳島大学医学部形成外科学講座教授 中西秀樹)
『新しい医学の進歩〜日本医学会分科会より〜』日医ニュース 1092号
 血管腫や色素性疾患(太田母斑)の治療は、カバーマークなどの保存的治療か、あるいは雪状炭酸圧抵療法、グラインダーによる皮膚剥削術、植皮術などの皮膚外科的治療が行われていた。しかし、瘢痕や色素沈着、色素脱出などを生じやすく、最近ではレーザー治療が主流になっている。この単純性血管腫の治療として初期に用いられたレーザーは、アルゴンレーザー、YAGレーザーであったが、瘢痕が残りやすいこともあり、最近は色素レーザー、ウルトラロングパルス色素レーザー(VbeamTM)、QYAGレーザーなどが開発され多用されている。その後、血管腫の治療レーザーと波長の異なる刺青の治療用に開発されたQルビーレーザーの臨床応用により、太田母斑などの色素性疾患も治療対象になった。最近は、Qアレキサンドライトレーザー、QYAGなども同様の治療効果があり、確立された治療法になっている。

 血管腫のレーザー治療の対象疾患として、単純性血管腫が主で、大半が自然消退する苺状血管腫はレーザー治療されていなかった。しかし、消退後に皮膚の隆起が残存して醜状を呈することがあり、後に整容的見地から手術療法が行われることがあるので、最近では乳児期早期にレーザー照射して、隆起が残らないように治療されている。この苺状血管腫のレーザー治療に関しての有効性については意見が分かれており、これからの課題である。
 
 色素性疾患のレーザー治療は、刺青の治療を目的に開発されたレーザーを太田母斑の治療に用いたことから始まり、後に外傷性刺青、扁平母斑など適応疾患を広げている。

 また、異所性蒙古斑は五歳前後で自然消退することもあるので経過観察されていた。しかし、異所性蒙古斑が自然消退しない場合は、整容的見地から治療される。特に手背などの露出部は学童期前に治療が終わっていることが望ましく、五歳より早く乳幼児期に治療を希望することが多い。

 母斑細胞性母斑(色素性母斑)の斑状の黒色斑(境界部型)を複数のレーザーを用いて治療する試みがなされている。このレーザー治療は保険適用でなく、治療回数、治療効果など確立された治療法ではないが、顔面の鼻部や口唇部など外科手術で傷跡や変形が残る部位では治療の希望者が多い。

 シミやシワなどの抗加齢療法としてレーザー治療が普及すると思われるが、客観的検証と正しい機種の選択やインフォームド・コンセントが重要となる。


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