マイケル・ムーア監督作品 映画『sickoシッコ』
日医ニュース2007.9.5 『案内』より
 『華氏九二』『ボウリング・フォー・コロンパイン』などで、全米を衝撃の渦に巻き込んだ映画監督のマイケル・ムーアが、アメリカにおける医療制度の暗部をえぐり出した映画『シッコ(sicko)』を完成させた。医学・医療技術の先進国でありながら、国民健康保険制度がないアメリカには、約5千万人の無保険者がおり、毎年1万8千人が治療を受けられずに亡くなっているという冷厳な事実がある。

 アメリカの「病理」を徹底的に描いてきた鬼才マイケル・ムーアは、事実を追い掛けるうちに、「アメリカの医療制度はシッコ(sicko=病気)だ」と叫ばずにはいられなくなる。

 治療を受けようとすると、その疾患とは関係のない「既往症」によって保険会社から支払いが拒否される女性。支払い能力がないとの理由で、それまで入院していた病院から一人でタクシーに乗せられ、公共支援施設前の路上で強制的に降ろされる高齢者。骨髄移植を待っていた患者に組織適合ドナーが見付かったとの連絡が入ったにもかかわらず、保険会社からの支払い見通しが立たず、亡くなってしまった黒人男性……。

 この映画が描き出す世界は、まさに「病に冒されたアメリカ」ではあるが、現在の日本の医療が進んでいる方向と共通している。窓口での一部負担はあるものの、健康保険証一枚あれば、「だれでも、いつでも、どこでも」安心して医療を受けることのできる、日本の国民皆保険制度を堅持していくためには、アメリカの医療の現状を対岸の火事と見るのではなく、他山の石としなければならない。

 アメリカ医療の実態を知ることは、これからの日本医療を考えるうえで不可欠である。なぜなら、ここ十数年の日本の医療の方向性は、アメリカ型の市場原理主義に基づく医療の株式会社化に限りなく近いからである。
・・・・以下略
私見)
一度は見ておいたほうがいい映画のようです。

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