リビー・ジオン事件(1984年)
日経メディカル・オンライン 2009.12.16
・1984年3月、18歳のリビー・ジオンが、ニューヨーク病院の救急外来に搬送されたが死亡。
・入院後、インターンとレジデントが治療を行った。興奮状態と高熱を「ウイルス性感冒とヒステリー発作」と診断
・鎮痛薬メペリジン(Meperidine)を使用した後、高体温となり、心肺停止状態で死亡。

・原因は服用中の抗うつ薬フェネルジン(Phenelzine)とメペリジンの相互作用によるセロトニン症候群によるものであろう。
・患者の父シドニー・ジオン(エール大学法科大学院出身で、検察官、小説家、現在newyork time特派員)は、病院、レジデント、監督責任のある指導医を提訴。

・患者の状態変化を看護師がインターンに連絡したがインターンは、多忙で診察しないまま指示を出した。
レジデントの過労や睡眠不足がリビー事件の引き金になったのでは?
・1984年当時はレジデントが休憩なしに連続36時間勤務することが可能

ニューヨーク州高位裁判所の判決(1986)
 ・レジデントが十分に監督されず医療行為を行なっているのは問題。
 ・緊急時には重篤な患者を卒後研修中の医師が治療しても許される
 ・指導医などに相談なく治療を行うのは医療の質の低下である。
 ・インターンやレジデントの長時間労働が医療の質を低下させている。
 ・インターンやレジデントが連続して働くことを規制する法案を提案する
 ・レジデントおよび指導医の過失(negligence)を認定し、75万ドル(後に35万ドルに減額)の賠償責任
 ・懲罰処分はなし、病院の監督責任も認めない

ベル委員会の提言(1987年)
 ・レジデントの労働時間はアルバイトを含めて週平均80時間以内に抑えるべき
 ・州はこのシステム改革に対して十分な予算を支出すべき

リビー条例の成立(1989年)
 ・ニューヨーク州ではレジデントの労働時間を週平均80時間以内とし、連続24時間以上の労働を禁止

・リビー事件の本質は何か?(ベル医師の批判)
 ・患者ケアの向上は、レジデントの労働時間制限ではなく、監督(supervision)で達成できる
 ・急性期病院で患者ケアの責任を持つのは専門医資格のある指導医
 ・レジデントが自分で行なえる医療行為と、監督下で行えない医療行為を明確化すべき
 ・しかし、レジデントの医療行為に対する指導医の監督責任が明らかにされていない
・ニューヨーク州のマウントサイナイ病院での生体肝臓移植のドナーの術後死亡事故(2003年)
  ・卒後1年目のインターンが術後管理
  ・他に36人の患者を受け持っていた
  ・看護師の不足
  ・サイナイ病院の肝臓移植は中止

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