医療介護改革 本社提言を読んで(上)
日経新聞2010.04.07朝刊
川渕孝一 東京医科歯科大学教授 医療経済学専門寄稿
・2010年3月15日公表の日本経済新聞の『医療・介護制度改革に関する提言
 @医療提供体制:家庭医に初期治療を任せ、病院は高度医療に専念
  医師不足解消にのため各都道府県に診療科別に専門医師数を定める。
  ITの活用で医療の質向上と効率化を達成する
 A高齢者医療と介護で海外の人材の受け入れを拡大し、社会的入院が多い療養病床の削減、医療と介護の一体的運用
  保険財政で公的な医療・介護費は総額管理としGDPの10%以内とする
  後発医薬品使用を促進、市販類似薬品は保険適用外とし、支出の効率化
  医療介護の財源として消費税を充てる(5%から15%アップ)、不足分は混合診療を解禁し。自己負担
 B自由開業医制とフリーアクセスの制限
・2003年に歯科医を医師にシフトさせる構造特区を申請したがだめだった。
スウェーデンでは初期診療は家庭医が行う、これは医師がすべて公務員だから可能
 ・日本では民間が主体なので政治的な介入は困難
 ・まず日本では一般医療費の52.4%を占める入院部門の効率化
・入院医療のムダ
 ・DPC(包括支払制度)の調査の結果
  ・全国160.9万床のうち29.9万床は物理的に空床
  ・特に一般病床は19万床が空床
  ・無理に入院日数を引き延ばしている例を加えると約22万〜25万床空床
  ・要するにかなりの削減可能な病床が存在する
・65才以上の人口がピークになる2040年では4万床程度の一般病床が不足→在院日数を短縮すれば約26万〜29万床過剰
・金額にすると現在約1.4兆〜1.6兆円の保険財政の無駄遣い
・退院後の受け皿が整わないため入院期間が超過(社会的入院)、このムダは0.2兆円
空床化回避の入院延長およびオペの非効率化による待ち日数の発生によるムダ、1.2兆〜1.4兆円
一般病床における要入院患者数の将来予測(万床)

2008年
(現状)
2020年
(予測)
2030年
(予測)
2040年
(予測)
現状の在院日数を前提とした必要病床数
(A)
71.986.693.794.5
在院日数が短縮した場合の必要病床数
@在院日数が20.6日→14.2日に短縮(B)49.559.664.465.0
A在院日数が20.6日→13.4日に短縮(C)46.956.561.061.6
過剰病床数
現状の在院日数を前提の場合
(90.9万床−A)
19.04.3▲2.8▲3.6
@の場合
(90.9万床−B)
41.431.326.525.9
Aの場合
(90.9万床−C)
44.034.429.829.3
注)
@は在院日数がもっとも長い施設でも調査対象の入院日数の平均値(15.1日)まで短縮された場合
Aは調査対象の上位25%水準(13.7日)にまで改善した場合
2008年時点の一般病床数は90.9万床
▲は不足分

・コペンハーゲン市内の公的病院では治療終了後、ナーシングホーム・在宅ケア移行まで待機入院の高齢患者
 ・市が病院に1日177デンマーククローネ(約3万5千円)支払う
 ・3日ごとに高くなる
 ・治療終了後8日間入院した場合、市の負担は約28万〜60万円
・救急医療の現状
 ・2008年の重症以上の救急搬送で照会回数11回以上が922件(たらい回し)
地域件数割合
東京都50.7%
埼玉県14.3%
奈良県5.3%
千葉県5.0%
大阪府4.8%
(東京は23カ所の救急センターがあるのにもっとも多い)
 ・救急搬送後、死亡退院となった疾患は内因性疾患(循環器、新生物、脳血管)、外因性疾患(交通事故など)は全体の4分の1。
救急業務の縦割り行政が問題(救急搬送情報→消防庁、医療機関情報→厚労省
・両者をリンクさせるデータベース構築を
・医療構造改革のいままでの経過
 ・福田康夫政権下の社会保障国民会議で25年段階で医療介護に85兆〜94兆円必要と推計
 ・財源負担は麻生政権に引き継ぎ→答えを出さず政権交代
・韓国・中国も少子・高齢化社会を迎える、日本は模範国家となるべく超党派で医療介護のグランドデザインの策定を望む ・
私見)
経済学の予想が全部当たれば不況はないはずだが・・・
川渕教授は療養型病院の現場を経験したことがあるのだろうか?
歯科Drを一般医にというなら、獣医を一般医にのほうがより現実的ではないだろうか?
歯科医師を医師にというのは実際に現場を経験したことがない人の無茶な考え

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