進化が止まった人類(2009年5月7日)

  1. 進化の原動力

    生命はその誕生の瞬間から進化の道を歩み始め、細菌などの原生生物から40億年の歳月を掛けて多様化し、知能の発達した人類まで到達した。 進化の原動力は、厳しい環境による自然淘汰と生物が持つ環境への適応力である。 

    地球上に生物が出現して以来、地球の自然環境は数度にわたり大きく変化した。 その度に、多くの生物が絶滅し、辛うじて環境変化に適応知った生物が繁栄し新しい機能を持つ生物へと進化して行った。 これに関しては、「最近感じる事」(06−07)に記載の「地球大進化」を参照されたい。(下線の引かれた部分をクリックしてください。)

    しかし、文明の進んだ現代では、人類は自然淘汰に対抗する手段を手に入れ、それを回避する道を進んでいる。 例えば、生まれつき病気で体の弱い人も、近代医学のお陰で生存し、子孫を残すことが出来る。 体を弱くする遺伝子が淘汰されず、子孫に伝わって行く。 社会での生存競争はあるが、頭の悪い遺伝子を持った人も社会的に保護されて子孫を残して行く。 自然界の動物には、良い遺伝子を選択する為オス同士がメスを巡って死闘を繰り返し、それに勝ったものが多くのメスを獲得して、強い遺伝子を持った子孫をより多く残す例が多い。こうした自然淘汰により、強い遺伝子を持った子孫が繁栄し、その種全体にその遺伝子が固定し進化して行く。

    人類も戦国時代には強い者が生き残り、沢山の側妻をもって子供を大量に生ませ、進化に貢献していた。 しかし、現代では知能の優れた人ほど少数の子供を持つ傾向があり、知能的な進化は停止している。 イスラム教社会以外では一夫一婦制が社会規範として守られ、良い遺伝子も平凡な遺伝子も平等に子孫に継承されて行く。 平等の思想が掲げられ、社会的な弱者もセーフティネットで保護され、自然淘汰されない。

    こうして、人類の進化は人類によって停止させられている。

  2. 文明の発達

    進化が停止した代わりに、人類は言葉、文字、活字などの伝承手段を持ち、先祖代々築いて来た生活の知恵、科学知識、政治手法、芸術作品などを後世の人達に継承する様になった。 これは形を変えた進化のメカニズムであり、人為的進化とも言える効果を人類にもたらしている。

    しかも、この人為的進化は自然淘汰による進化よりは比べ物にならないほど速度が速い。 自然淘汰による進化が止まった代わりに、人為的進化の手段を得て、人類は急速に進化している。 その陰には罠も仕組まれている。 例えば急速な人口爆発、工業化による環境破壊、原子爆弾の発明、化石燃料の浪費による地球温暖化など人類存続の危機を招いている。 文明の発達を促しながら、人類を破滅に追い込む可能性のある色々な罠に嵌らない様、これからの人類は注意深く自らの進化の道を切り開いて行かねばならない。