Puppy Linux 4.1.2 の改良

  ThinkPad T42 に入れてある Puppy 4.1.2 は今も進化しています。いつまでも建設中のサグラダ・ファミリア教会みたいなものです。
  ブラウザには Firefox 28 を使ってきましたが、Pale Moon に変更しました。家の Puppy 4.1.2 には様々なアップデートを施してあるのですが、Pale Moon は動作要件(特に c ライブラリのバージョン)が高く、通常の方法では動きません。
  Puppy Linux 本家フォーラムに glibc 2.19 を同梱した Pale Moon の pet パッケージがあるので、それを利用しました。(Puppy 4.1.2「改」の glibc は 2.10) OS は古いですが、最新のブラウザが利用できるようになりました。

 palemoon-27.6.2-p4-glibc219tweak.pet

  glibc 2.10 の Puppy で、Pale Moon だけが glibc 2.19 で動くという変則技です。/usr/lib/palemoon フォルダの中に glibc 2.19 のライブラリが含まれています。私は pet パッケージを展開して、手作業でファイルを配置しました。今後、Pale Moon のバージョンアップがあった時に、pet をアンインストールして、新しいバージョンを入れるのは手間だと考えたからです。glibc 2.19 が入っているフォルダだけ残して、別途ダウンロードした新バージョンの Pale Moon を入れればバージョンアップができます。

起動スクリプトは以下のようになっています。(pet に含まれていた /usr/bin/palemoon というスクリプトをリネームして利用)

palemoon.sh

#!/bin/sh
#export LC_ALL=C
/usr/lib/palemoon/glibc219/lib/ld-linux.so.2 --library-path /usr/lib/palemoon/glibc219/lib:/usr/lib/palemoon/glibc219/usr/lib:/usr/lib/palemoon/glibc219/libstdc++:/usr/X11R7/lib:/usr/lib/palemoon /usr/lib/palemoon/palemoon "$@"


  2行目はオリジナルでは有効になっていますが、私はコメントアウトしました。LC_ALL=C が有効になっていると、文字コード utf-8 でフォントの指定がないウェブページを表示した時に、文字が明朝体になってしまうのです。オリジナルが LC_ALL=C を指定している理由は不明です。無効にしても特に障害は起きていません。
  3行目から始まるコマンドは、ブラウザでは折り返して表示されていると思いますが、実際は1行です。

  現在の Pale Moon は mp4 動画の再生に、OS が持っている libavcodec を利用します。通常は、詳細設定 (about:config) で media.libavcodec.allow-obsolete を true に変更すれば、mp4 動画の再生が可能になるのですが、Puppy 4.1.2 では Pale Moon で mp4 の再生はできません。システムにある libavcodec が古すぎるか、Pale Moon のライブラリパスに含まれていない(そもそも glibc のバージョンが違う)ためだろう、と考えています。しかし、不思議なことに、flashplayer などのプラグインは動きます。

  そのため、YouTube の再生は vp8 コーデック利用になります。なお、Pale Moon の設定を変更すれば、vp9 も利用可能です。vp8 と vp9 のコーデックは Pale Moon が自前で持っているようです。

  次に youtube-dl の利用です。これは本来、動画をダウンロードするための python スクリプトですが、mplayer や mpv と連携して、YouTube 動画をストリーミング再生することができます。最新の Puppy である XenialPup 7.5 に、mpv とともに搭載されていることから興味を持ちました。 (XenialPup 7.5 の初期状態ではインストールされていません。私の記憶違いでした。youtube-dl を入れて mpv と連携させることはできます。) youtube-dl については以下のサイトを参照してください。

 https://github.com/rg3/youtube-dl/blob/master/README.md#readme

私は wget でダウンロードしました。ダウンロード後、実行属性を付ける必要があります。

(以下追記)

  古いOSでは、wget で SSL 通信に失敗する場合があります。ブラウザでダウンロードする場合は

 https://rg3.github.io/youtube-dl/download.html

  youtube-dl は動画サイトの仕様変更に対応するために時々更新されます。更新するには youtube-dl に -U オプションをつけて実行します。コマンドでの更新がうまくいかない場合は、新しいバージョンを直接ダウンロードします。

(追記終り)

  youtube-dl は python 2.6 / 2.7 / 3.2以上で動作します。ところが、Puppy 4.1.2 は python 2.5 です。それで、python 2.6 をインストールしました。

 Python-2.6.4-i486.pet

  上記パッケージをインストールすると、/usr/bin/python が python2.6 へのリンクになってしまいます。他のプログラムに影響するといけないので、python2.5 へのリンクに戻しました。

  次に、Puppy 4系向けの mplayer (pet パッケージ) をインストールしてみましたが、youtube-dl との連携はうまくいきませんでした。それで、久しぶりに mplayer をソースからコンパイルしました。かつて Vine Linux を使っていた時も mplayer はコンパイルして入れていました。

コマンドの例
# python2.6 /usr/local/bin/youtube-dl -f "(mp4)[height=720]" -o - "動画のURL" | mplayer -

-f オプションを指定しないと最大のサイズ(1080p)になってしまい、マシンのディスプレイに収まりません。(笑) 720p でも横方向がはみ出しますが、ウインドウをリサイズ(最大化)すれば、適切な表示になります。CPU使用率は、720p でもブラウザの 360p と同じくらいですので、ブラウザがいかに CPU パワーを食っているか分かります。

mplayerで再生中

  乃木坂46の「逃げ水」を 360p で再生中の図。ただし、動画の部分ははめ込み合成です。mplayer の xv 出力はキャプチャできませんでした。キャプチャしても動画の部分だけ濃い青色の背景になって抜け落ちてしまいます。



  ThinkPad T42 では今でも Puppy 4.1.2 や Lupu 5.2.8 を使っています。こんなに古いマシンでも適切に運用すれば、現在でも実用的に使うことができます。これまでも度々述べたことですが、このマシンはカーネル 3系以降の Puppy ではビデオドライバが適合せず、ビデオ性能を発揮できません。
  一般的には、古い OS の利用はお勧めできません。特別な事情がなければ、現行の公式 Puppy である Tahrpup, XenialPup, Slacko Puppy をお勧めします。
2018年2月

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XenialPup 7.5

  XenialPup 7.5 は公式最新の Puppy Linux です。lang_pack_ja-2.1.sfs を利用して日本語化したものを、Puppy Linux 日本語フォーラムで公開しています。(単純に lang_pack を適用しただけではなく、細部に調整を加えてあります。)

Puppy Linux 日本語フォーラム
Puplets (Puppy 派生版) の記事を参照して下さい。

  32bit, noPAE, uefi / legacy bios 両用です。「日本語化版」は正式な「Puppy Linux 日本語版」ではありませんが、フォーラムのメンバーからアドバイスをもらって改良を加えているので、普通に使えるレベルのものになっていると思います。

  Ubuntu 16.04 (Xenial Xerus) をベースにした Puppy で、XenialPup [zi:niəlpʌp] と呼ばれます。カタカナでは正確な発音は表記できませんが、概ね「ジーニアルパプ」となります。 カーネルが新しいので、最近のマシンに適合すると思われます。ただ、32bit バージョンは noPAE なので、4GB 以上のメモリを積んでいても認識されるのは 3.2GB 程度となります。64bit バージョンのほうは、そのような制約がありません。

  一部の無線LANアダプタのドライバが欠けています。(英語版の仕様です) 場合によっては atheros_k4.4.95noPAE-xenial32.pet を追加インストールする必要があります。

主な特徴

・メディアプレーヤーに mpv を採用。
・gtk-3 のライブラリと、pulseaudio をエミュレートする apulse を含む。これにより、最近の Firefox に対応しています。
・デフォルトブラウザは Pale Moon 27.6.1
・メールソフトは Claws Mail

  mpv は基本的にコマンドで操作するメディアプレーヤーですが、簡易な gui を持っています。XenialPup では CD/DVD のドライブアイコンをクリックすれば、mpv が起動して再生が始まります。(音楽 CD の場合は DeaDBeeF が起動) また、mpv のウインドウに音声や動画のファイルをドラッグすれば、再生されます。
  細かいオプションを指定するには、コマンドで操作する必要があります。この点は評価が分かれると思いますが、gui フロントエンドとなる SMPlayer を追加インストールすれば、gui での操作が可能になります。

SMPlayer (Qt 4) (ubuntu のサイト)

smplayer

ThinkPad X121e の SMPlayer で YouTube 動画再生中の図。ブラウザで再生するよりも CPU 使用率が低い。


  最近の Puppy では「CPUクロック変更ツール」がデフォルトでオンになっています。これは、負荷に応じて CPU の周波数を動的に変化させる省電力ツールです。しかし、動画のストリーミング再生では、再生開始時にバッファリングのためパワーが必要なので、CPU の周波数が下がっていると、もたつきます。「CPUクロック変更ツール」を改めて実行し、threshold (しきい値)を 30% に設定することをお勧めします。(「CPUクロック変更ツール」は「システム」メニューの中にあります)

  Firefox で apulse を利用して音を出すには about:config をいじる必要があります。詳しくは、Puppy 日本語フォーラムの記事をお読み下さい。
  現行の Pale Moon は h264/mp4 動画を再生するのに、システムに含まれる libavcodec を利用するようになっています。twitter の動画など web に埋め込まれた mp4 動画の再生が可能になっています。もちろん、YouTube 動画の再生にも対応しています。

  メールクライアントは Claws Mail です。これの日本語化については、iso を作成する時点では方法が分からなかったので、英語版のままとしました。その後、Ubuntu Bionic Beaver 用のファイルが流用できることが分かったので、追加の pet パッケージを作成しました。

claws-mail-NLS-ja.pet

Claws Mail は Sylpheed からフォークしたメーラーです。Sylpheed を使ったことがある人なら違和感なく利用できると思います。

  日本語入力は、lang_pack 由来の scim-anthy です。anthy は変換候補が少なくて、ちょっと物足りないのですが、JIS第3・第4水準漢字変換辞書を追加することで、かなり改善することができます。方法は...

・まず、utf-8 の辞書ファイルが使えるように scim-anthy-1.2.7.pup4.4.2.2.1.pet をインストール。
anthy-dic-jis34-0.3.tar.gz を展開して得られる jis3_4.t を /root/.anthy/imported_words_default.d に配置する。

Puppy 日本語フォーラムの記事

  第3・第4水準漢字を含む単漢字や熟語、記号を呼び出すことができるようになります。しかし、 今度は変換候補が多くなって目当ての文字を選ぶのに手間取ることもあります。 上記辞書ファイルを削除すれば、もとの状態に戻ります。scim-anthy-1.2.7.pup4.4.2.2.1.pet はインストールしたままでも問題ありません。
  今は mozc が漢字変換の主流になっているようですが、サイズが小さくてメモリ使用量も少ない anthy にはそれなりのメリットがあると思います。

  Puppy 日本語フォーラムには、Puppy Linux を利用するうえでのヒントや、追加アプリケーションの情報がたくさんあります。ぜひ、訪れてみて下さい。
2018年4月

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