Slacko Puppy 5.7

  Precise 571JP に含まれるビデオドライバが ThinkPad T42 に適合しないことは、以前にも書きました。そういう理由で、これまで Puppy 4.1.2 や Lupu 5.2.8 を使ってきました。特に不便はないのですが、システムのライブラリが古いので、動かすことのできるアプリケーションも旧バージョンに限られます。

  T42 のビデオチップ (ATI Mobility Radeon 7500) の性能を活かすには ATI ドライバ(no KMS)を使うことが必須です。
しかしながら、カーネル 3系以降の Linux (Puppy に限らない)では Radeon ドライバ(KMS)が自動的に適用されます。
これまでの経緯をまとめますと...

・Precise 571JP では xorgwizard で ATI ドライバを選択することができるが、OpenGL は無効となる。
  (OpenGL 関連のファイルは日本語版作成の過程で削られている) OpenOffice の表示が一部おかしくなる。
・Tahrpup 6.0.5 や Slacko 6.3.2 では xorgwizard で ATI ドライバを選んで再起動すると、エラーが出て X が起動しない。

  Slacko 5.7 はカーネルバージョンが 571JP とは微妙に異なる(したがってカーネルドライバも異なる)ので、ひょっとしたらうまく行くかも、と考えてトライしました。結果、Slacko 5.7 では他のバージョンのような不具合が生じませんでした。ビデオ関連がうまくいけば、あとは何とでもなります。まず、lang_pack_ja-2.0.sfs にて日本語化。bash, openssl, wget, wpa_supplicant をパッケージマネージャを通じてアップデートしました。

本来のビデオ性能を発揮できるように、xorg.conf の "Device" セクションをカスタマイズしました。

Section "Device"
 Identifier  "Card0"
 Driver      "ati" #card0driver
 Option "GARTSize" "32"
 Option "AccelMethod" "exa"
EndSection


  Slacko には正式な日本語版が存在しないせいか、ネット上に日本語の情報がほとんどありません。実際に使うにあたって、いくつか手直しが必要でした。

1. urxvt のカスタマイズ

  初期状態では、文字が見づらい、スクロールバーが左にある等、不満な点があります。一番困ったのは、カーソルを行頭・行末に飛ばす [Home] [End] キーが効かないことでした。/root/.Xdefaults を編集します。

[Home] [End] キーを利用するには、1~2行目を有効にして、3~8行目はコメントアウトする。
1行目 Rxvt*keysym.0xFF50:\001
2行目 Rxvt*keysym.0xFF57:\005

フォントと字間の調整。
urxvt.font: xft:Fixed:style=Regular:pixelsize=12
urxvt.letterSpace: 2

スクロールバーを右に設定。
urxvt.scrollBar_right: True

2. Geany の初期設定

  Geany で日本語を入力して保存しようとすると、文字コードに問題あり、と怒られます。Puppy のデフォルトエンコーディングは UTF-8 ですが、なぜか Geany の初期設定がそのようになっていません。設定の変更が必要でした。

設定 -> ファイル -> デフォルトのエンコーディング -> UTF-8

3. mtPaint の日本語化

  lang_pack に日本語訳が含まれていますが、メニューが日本語になりません。mtPaint のコンパイルの際に国際化対応のオプションが指定されなかった可能性があります。他のバージョンを入れれば直ります。

mtpaint-3.44.73-i686.pet
をインストール。

4. pMusic の改善

  pMusic はスクリプトで構成されたミュージックプレーヤーで、サイズが非常に小さいのが特徴です。gtkdialog を利用してシンプルな GUI を実現しています。ですが、どういうわけか、Slacko 5.7 に搭載のバージョンでは、度々 CD の読み込みに失敗します。パッケージマネージャで pMusic 4.7.1 にバージョンアップしました。

  Slacko では cddb_query を使って、CDDB からデータを取得します。デフォルトでは freedb.org からデータをもらってきますが、日本の CD の中には freedb.org に登録されていないものもあります。日本語 CDDB の設定を加えました。(alias コマンドを応用)

/etc/profile に以下を記述
 alias cddb_query='cddb_query -p 80 -P http -s freedbtest.dyndns.org'

  しかし、pMusic には下図のような不具合があります。

pmusic

track 1 の曲名が表示されるべき場所に CD のタイトルが表示されています。そのため、track 2 以下の曲名がずれてしまうばかりか、存在しない track 9 が表示されています。CD の再生はできますが、演奏中の曲名が誤って表示されます。
  この現象は AKB48 の CD に限ったことではなくて、比較的新しい CD で起こります。例えば、Zard の CD でも 90年代のものは正常に表示され、2000年代のものは、ずれて表示されます。これでは ripping の時に困るので、ripper として Asunder をインストールしました。

  再生に関しては、cddaplay-0.0.1.pet に同梱の cdda-player を利用することにしました。コマンドラインでの操作になりますが、
# cddb_query read
で収録曲のリストが表示できますし、
# cdda-player
で再生ができます。オプションを指定すれば、特定の track だけ再生したり、途中で止めたりできます。再生中の曲名も表示されます。

cddaplay-0.0.1.pet (Puppy 日本語フォーラム)

cdda-player

  pMusic 以外の GUI のミュージックプレーヤーがどうしても必要なら、DeaDBeeF のパッケージが利用できます。

deadbeef-static-0.7.2-i686.pet (Puppy 本家フォーラム)

  今回は、バックアップがとりやすいように、個人保存ファイルのサイズ 512MB にこだわって、DeaDBeeF の追加は避けました。(注: 個人保存ファイルは最大 1.8GB まで拡張することができます)

5. ブラウザの変更

  Slacko 5.7 のデフォルトブラウザは、リリースの時期から考えると止むを得ないのですが、Firefox 17 esr です。あまりにも古いので、Pale Moon 27.6.2 を入れました。個人保存ファイルを消費しないように、ダウンロードした tarball を展開して自家製 sfs を作りました。Firefox 17 が起動しないように、デフォルトブラウザを Pale Moon に変更しました。



  Slacko 6.3.2 の記事にも書きましたが、Slacko は Ubuntu 系の Puppy とは毛色が違います。Ubuntu のリポジトリが利用できる Precise 571JP や Tahrpup と比べると、追加ソフトウエアや情報が少ないように思います。それに加えて、Slacko 5.7 はアジア言語(2バイト文字)への配慮が不足しています。Slacko が「Puppy Linux 日本語版」のラインアップに含まれていたならば、そういった問題点を解消してリリースされたことでしょう。
  Slacko 5.7 をインストールしたことで、以前のバージョンと比べてどういうメリットがあったかについては、次回に書く予定です。

2018年4月

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Slacko Puppy 5.7 その2

  他の Puppy と取り扱いをそろえるために、省電力関連のパッケージをインストールしました。

acpitool_0.5.1-3_i386.deb
thinkfan_0.8.1-1_i386.deb

これらは、ubuntu 用のパッケージですが、Slacko でも動きます。どういう役割をするものかお知りになりたい方は、以前の記事を参照してください。

mpv のインストール

  XenialPup で知った高機能なメディアプレーヤー mpv をインストールしました。

mpv-20150814-git-i686-precise.pet
mpvdeps-1.0-4slacko.pet

ありがたいことに、Slacko で動かすための差分ファイルが提供されています。
Puppy 本家フォーラムの記事

  Slacko 5.7 には GNOME MPlayer が搭載されているので、mpv を入れるのは無駄に思われるかもしれません。youtube-dl と連携して 動画を再生するには mplayer も使えますが、YouTube の playlist やライブ映像の再生は mpv でないとうまくいきません。
  youtube-dl を動かすには python が必要ですが、python 2.7 が devx_slacko_5.7.sfs に含まれているので、予めダウンロードしてインストール(sfs ロード)しておきます。

コマンドの例
# mpv --vo=xv --ytdl-format="(mp4)[height=360]" "動画のURL"

  playlist 再生の場合、例えば

"https://www.youtube.com/watch?v=文字列1&list=文字列2" -> "https://www.youtube.com/playlist?list=文字列2"

のように書き換える必要があります。コピーした URL をそのまま貼り付けると、リストの1曲目だけ再生されて終わります。

  GUI フロントエンドとなる SMPlayer の最新版を使えば、このような書き換えをしなくても playlist が再生できるようですが、Slacko 5.7 では利用できるかどうか分かりません。(SMPlayer のパッケージが提供されていなければ、自分でコンパイルしなければなりませんし、SMPlayer を動かすのに必要な qt ライブラリの問題もあります)

  レコチョクで購入した曲を mplayer や mpv で再生するとアルバムアートが表示されます。Puppy 4.1.2 や Lupu 5.2.8 ではできなかったことです。

slacko desktop

mplayer にて m4a ファイルを再生中の図。アルバムアートは 1280x1280 のサイズですが、360x360 に縮小して表示しています。デスクトップは Slacko オリジナルのものから変更しています。

コマンドの例
# mplayer -vo gl -x 360 -y 360 'ファイル名'

  なお、動画を再生する時は -vo xv を指定しています。Slacko 5.7 で ATIドライバ (no KMS) を使っている場合、OpenGL はソフトウエア処理になり、CPU に大変負担がかかります。処理が追いつかない場合もあります。ハードウエア処理にならないのは、どうも no KMS を選択した場合の制約らしいです。ゲームには向きません。
  このマシンの場合、Puppy 4.1.2 や Lupu 5.2.8 ではハードウエア処理ができるので、ゲームをする場合はそちらを起動すればよいと割り切るしかありません。余談ですが、mplayer と mpv ではコマンドオプションの書式が微妙に違うので厄介です。

Pale Moon の調整

  about:config の設定をいくつか変更しています。

gfx.xrender.enabled -> false

  xrender を無効にすることで、X の CPU 使用率が下がります。(環境によるかもしれません)

media.libavcodec.allow-obsolete -> true

  libavcodec が最新でない場合、古いバージョンの使用を許可します。(本来はシステムにある libavcodec をアップデートすべきですが。) libavcodec を使用しないと mp4 形式の動画が再生できないので、この設定は重要です。Firefox は 古い libavcodec について警告を表示しますが、Pale Moon や SeaMonkey は「無言」なので注意が必要です。

  Puppy 4.1.2 や Lupu 5.2.8 上の Pale Moon では、どういうわけか libavcodec が利用できない (libavcodec のバージョンが古すぎる?) のですが、Precise 571JP や Slacko 5.7 では正常に動作します。最近の Puppy では当たり前のことですが、古い OS しか使えない ThinkPad T42 においては画期的なことです。

browser.cache.disk.parent_directory -> /tmp
(この項目は初期状態では存在しません。右クリックから新規文字列値として作成します。)

  ディスクキャッシュの場所を /tmp に設定しています。こうすると、個人保存ファイルを消費しなくなります。なお、キャッシュサイズはデフォルトのままでは大きすぎるので、10MBに制限しました。これは通常の設定画面で設定できます。


  本題から逸れますが、Puppy の frugal インストールでは、個人保存ファイルのサイズに制限があることが問題視されることがあります。しかし、サイズの大きなアプリは sfs 形式でインストール(= sfs をロード)し、同様にサイズの大きい音声ファイルや動画ファイルなどは、個人保存ファイルの外に置くことで、 個人保存ファイルの消費を避けることができます。ですから、私は frugal インストールが不便であるとは考えていません。 個人保存ファイルのバックアップからいつでも迅速に復旧できるというメリットのほうが大きいと思うのですが...
  自分の不注意でシステムを壊してしまった場合、通常の OS では OS 自体をインストールし直して、アプリのインストールや各種設定もすべてやり直し、となります。Puppy ではそんな苦労をしなくてもいいのです。Puppy のちょっと変わった運用方式 (frugal インストール) が、一般の人にはなかなか理解してもらえないのですけど。個人のブログなどに Puppy について間違った解釈が書かれているのを見るにつけ、残念に思います。



  Slacko 5.7 によって ThinkPad T42 がずいぶん近代化されました。このマシンは製造から13年が経過しているので、先が長くないかもしれません。もっと早く試していればよかった...
  もっとも、アプリケーションが改良されたことで実現した部分もあるので、最初から Slacko を使っていればよかった、とも言いきれません。
2018年4月

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