Slacko Puppy 7.0


  遅ればせながら、2021年1月にリリースされた Slacko Puppy 7.0 について書きます。これは Slackware 14.2 ベースの Puppyで、長らく開発中だったものが 2021年になってようやく正式版となりました。リリースの日付に限れば、2022年10月現在最新の公式 Puppy ということになります。しかし、既に Ubuntu ベースの Fossapup64 9.5 が出ているので、バージョン番号が示すように、2世代前の Puppy であるという見方もできます。実際、xorg まわりが古く、ThinkPad L440 ではトラックポイントのボタン操作のために XenialPup 7.5 と同様の対策が必要でした。
  Slacko Puppy 7.0 には 64bit 版と 32bit 版があります。カーネルは 64bit 版が 4.19 系、32bit 版が 4.4 系です。遅れてやってきた Puppy ですが、やや古めのパソコンに向いているかもしれません。

  一方で、Fossapup64 の開発後に woof-CE (Puppy のビルドシステム) に取り込まれた、インターネット広告を排除する仕組みや zram swap が搭載されています。
  前者は、YouTube などに表示される広告をブロックするものですが、広告の url データベースに基づくので完全ではありません。後者は、圧縮された ram disk を swap として用いるものです。Puppy は USB メモリから起動して用いる人も多いので、場合によっては swap をメモリ上に置くことが役に立つと思います。私のマシンは RAM 4GB なので、通常の作業では swap の出番はありませんが...

slacko64 のデスクトップ
Slacko64 7.0 のデスクトップ

日本語化するためのパッケージ

 64bit ... 日本語フォーラムで Slacko64 7.0 専用の日本語化パッケージを公開しています。
 32bit ... lang_pack_ja-2.1.sfs が使えます。ただし、このランゲージパックは公開されて久しいので、新しい Puppy には適合しない部分も多くなっています。

収録されている主なアプリ

  デフォルトのブラウザは Firefox 68.12.0esr です。少し古いバージョンですが、現在でも十分役に立つと思われます。
  ワープロ Abiword、表計算 Gnumeric、画像処理 mtPaint など Puppy 標準のアプリが収録されています。ただ、Slacko 7.0 に搭載されている mtPaint 3.49.12 は国際化対応になっていないようで、ユーザインターフェースが日本語になりません。私は mtPaint 3.40 をインストールして使っています。その他、動画等再生用に GNOME MPlayer、音楽再生用に Pmusic が搭載されています。



  Chrome の最新版も動きますが、ハードウエアアクセラレーションは有効になりません。WebGL も無効。HardInfo では Direct Rendering - Yes と表示されるのですが、mesa のバージョンが低いのが原因かもしれません。デフォルトブラウザの Firefox では WebGL が有効でした。
  正式版のリリースが遅れた理由は分かりませんが、ひっそりとリリースされ、あまり話題になることもなかったように思います。しかし、Ubuntu ベースの Puppy よりも動作が軽快であるとして Slacko を好む人も一定数はいるようです。

2022年10月

S15Pup-22.12

  およそ1年前に Slacko Puppy 7.0 について書きました。今回もリリースからずいぶん時間が経ってしまいましたが、後継バージョンの紹介です。
  S15Pup は、2022年12月にリリースされた、現時点で最新のオフィシャル Puppy です。64bit 版と 32bit 版が用意されています。カーネルは 64bit 版が 5.15系、32bit 版が 5.10系です。
  これまでの Puppy は 7.5 → 8.0 → 9.5 とバージョン番号が上がっていましたが、S15Pup の場合は 22.12 というようにリリースの時期がバージョン番号のかわりになっています。Ubuntu のような付番方法です。

  S15Pup は Slackware 15.0 ベースです。これまでは Slackware ベースの Puppy は Slacko (Puppy) と呼ばれていました。今回、開発者が交代し、Peebee さんが担当しました。本来なら Slacko 8.x になるはずですが、前の作者さんに遠慮したのだろうか、と私は考えています。

  Peebee さんは Bionicpup32 の開発者でもあります。そのため、デスクトップの構成や収録されているアプリの種類は Bionicpup32 に近いものになっています。例えば、メディアプレーヤーとして GNOME MPlayer、オーディオプレーヤーとして Pmusic が収録されています。デフォルトのブラウザは Light (Firefox の軽量版) です。現在のウェブを閲覧するにはちょっと時代遅れ、力不足ですが、CUPS インターフェースや html 形式のヘルプを表示するために搭載されています。必要に応じて Firefox や Chrome といったメジャーなブラウザを追加することができます。
  Slacko 7.0 と同様に、起動時に zram swap を有効にします。USB メモリなど書き込み回数に制限のあるメモリカードの類から起動する場合は通常、swap が利用できませんが、メディアに書き込まない zram swap なら問題なく利用できます。

S15Pup デスクトップ
S15Pup64 のデスクトップ

  この Puppy は iso 自体が更新されていきます。この点も Bionicpup32 と同様です。新しい iso がリリースされた場合は、sfs ファイル等を置き換える必要があります。

  S15Pup には日本語化パッケージが用意されています。

S15Pup64 日本語化パッケージ
S15Pup32 日本語化パッケージ

いずれも下記の場所にあります。
Puppy Linux 日本語フォーラム - 追加アプリケーション

  一度日本語化すれば、その設定内容は save file に書き込まれます。iso が更新された場合は、save file を引き継ぐことができるので、更新の度に日本語化パッケージを適用する必要はありません。
注意: システムの大幅な変更が更新内容に含まれている場合、save file を引き継げないことがあります。そういった場合は、save file を使って起動しようとすると警告が出ます。



  Slackware ベースの Puppy は Ubuntu ベースの Puppy と比べると、レポジトリに用意されているパッケージが少ないです。無ければ自分で作りなはれ、というのが Slackware のスタンスだから仕方ないかもしれません。そのせいか、Slackware ベースの Puppy は比較的人気がないように思います。
  通常の使用に限れば、ブラウザは追加するとしても、他は同梱のアプリでだいたい間に合うのではないかと思います。

2023年9月


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